再生可能エネルギーへの関心が高まっており、太陽電池の仕組みの学習や太陽電池づくり体験の機会が求められている。しかし現状では、一般家庭に浸透しているシリコン太陽電池に関する体験型の公開講座はほとんど実施されていない。シリコン太陽電池の作製に丸1日を要すること、および教材費が高いことが原因である。そこで本研究は、半日の公開講座で作製できるシリコン太陽電池教材を新たに開発し、一般市民を対象とした再生可能エネルギーを学ぶための公開講座で、本学習プログラムの教育効果を検証することを目的としている。 平成27年度にシリコン太陽電池教材の簡易作製プロセスと作製時間の短縮を実現した。しかしながら、太陽電池の電流電圧特性に大きなバラつきが見られたことから、平成28年度は太陽電池教材の電流電圧特性のバラつきの低減を目的に研究を進めた。考察と試行錯誤を繰り返すことで、最終的には簡易作製プロセスに、450℃、1分の熱処理プロセスを新たに加えることで、電流電圧特性のバラつきの低減が図れることがわかった。さらに、この熱処理プロセスを加えることで発電効率の向上にも成功した。簡易作製プロセスを検討した本来の目的は太陽電池作製時間の短縮であったが、今回5分程度のプロセスを加えるだけで、太陽電池の特性に大幅な改善が確認されたことから、今後はこの熱処理プロセスを採用することにする。 次に、シリコン太陽電池教材の実験実習における活用であるが、高専専攻科の実験テーマに導入した。試行版のテキストを作製し、太陽電池作製実験を行い、アンケートと口頭試問によりその教育効果を調査した。一方で、一般向けの公開講座においては、開発したシリコン太陽電池の公開と、それを用いた発電実験を行った。公開講座の参加者の反応は良く、太陽電池教材に興味を持ってもらうことができた。
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