研究課題/領域番号 |
15K16262
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
水谷 晃三 帝京大学, 理工学部, 講師 (30521421)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教育工学 / 教育支援システム / Classroom Response Sys. |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究では主に実証システムの改良と,次年度以降の研究活動で試作を予定している自律的な学習支援機構のためのアーキテクチャの検討を行った.実証システムの改良はこれまでの研究成果であるWebCRSと呼ぶWebベースのクラスレスポンスシステムの改良である.クラスレスポンシスシステムは授業中における教授者と受講者のコミュニケーションを支援するシステムの一種である.リアルタイムに動作する必要があるため,従来は専用のハードウェアを伴う複数の機器で構成されていたり,専用のソフトウェアをPCやスマートフォンなどの端末にインストールするなどのシステムアーキテクチャが主流であった.しかしながら,このようなアーキテクチャはシステムの導入から運用に至るまでの費用的あるいは時間的コストが高くなりやすい.この問題に対してWebCRSはPCやスマートフォンなどに搭載されている標準のWebブラウザを使用することを前提としている.Webブラウザを用いた同種のシステムではリアルタイム性が問題になるが,WebCRSではこの問題に対して新しいWeb技術の一つであるWebSocketを採用している.すでにクラスレスポンスシステムとしての基本機能の実装は完了しているため,H27年度の研究では実授業での試用範囲を広げるための補助的な機能の実装を進めた.自律的な学習支援機構のためのアーキテクチャの検討では,計画段階で検討していたエージェント指向アーキテクチャの導入方法について具体的な検討を開始した.まず情報収集を中心とした調査を行い,エージェント指向アーキテクチャの導入の有効性や将来性について検討を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平静27年度の研究ではWebCRSの改良を進めるとともに,実授業での試用を通じて次年度以降の自律的な学習支援機構のためのアーキテクチャの検討を行う予定であった.計画どおり開発環境の整備などを進めていたが導入したコンピューターに初期不良が生じ,原因の特定と修理に時間を要するという事案が発生した.そのため,予定していた改良作業に遅延が発生し,実授業への試用についても機を逃すことになった.修理が完了してからの研究作業は概ね順調に進行しているが,改良作業の成果を反映した形での実授業への試用は,その試用対象の授業の開講時期の関係もあり平成28年度以降になる予定である.以上の結果,計画していた内容の研究活動は遅延している状況であるが,滞りが発生した期間においては,自律的な学習支援機構のためのアーキテクチャの検討を前倒しで行っており,研究全体の進捗には大きな遅滞は生じていないと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究では,遅れているWebCRSの改良と実授業への試用を通じたシステム評価,および自律的な学習支援機構のためのアーキテクチャの実装を予定する.すでに一部機能の実装は終了し実授業への試用も開始している.自律的な学習支援機構のためのアーキテクチャについては,計画段階で検討していたエージェント指向システムアーキテクチャではなく,データ分析に適した既存のフレームワークを活用することも視野に検討を進めている.既存のフレームワークを活用することによって,システムの保守性が向上するなどの利点も期待される.特に近年はビッグデータの利活用のための多くのフレームワークや,ディープラーニングなどの人工知能分野の技術のフレームワークがオープンソースとして公開され,容易に活用できるようになっている.本年度の研究ではこれらについての検討を踏まえた実装を行う予定である.また,学会発表についても順次行っていく計画である.特に平成27年度は研究作業の遅滞もあり学会発表できるほどの成果を十分に得ることができなかった.平成28年度の活動では学会活動を活発化させてこれまでの成果を発表していく計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要でも述べた通り,導入した一機材の初期故障により研究の遅滞が発生した.これに伴い研究発表を含む学会活動についても計画を見直した.この結果,国内旅費等の学会活動に伴う費用を中心に次年度使用額として繰り越すことにした.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の活動では自律的な学習支援機構のためのアーキテクチャの実装を予定している.実装したシステムの検証のためサーバ型のコンピュータを購入予定である.また,平成27年度に予定していた学会発表などを今年度の活動として行っていく予定であるため,そのための活動費(旅費や参加費等)として使用する計画である.
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