本研究の目的は、大学生がレポートの執筆過程を自分自身で振り返ることを支援するシステム開発を行うことであった。近年のアカデミック・ライティングの教育では、書き上げたレポートそのものを推敲するだけでなく、自分がどのようにレポートを書いたのかという執筆過程そのものを振り返ることが重視されている。しかし、大学生が1人で執筆過程を振り返ることは難しい。そこで本研究では、(1)大学生がレポートを書いているときの執筆中のログデータをもとに、書き方の癖の抽出を行い、(2)癖に合わせて振り返りの視点を提示するシステムの開発を目的とした。 研究当初は、大学生のレポートを書いているときのログデータをもとに、書き方の癖の類型化を目指した。しかし、レポート執筆のログだけでは類型が難しいことが明らかになったため、「レポートの準備書き段階」(メモや概念地図の執筆)に関するログデータも取得できるシステム「レポレコ+」の開発・改良をおこなった。これにより、学習者の思考プロセスをより把握できるようになった。 その上で最終年度では、「レポレコ+」を使った、チューターと学生による指導場面の分析をおこなった。この分析を行うことで、「学生がどのような行動をしたときに、どのような問いかけやアドバイスを行ったらよいのか」について明らかにすることを目的とした。分析の結果、「レポートの準備書き画面」と「レポート執筆画面」の行き来の際に、「書きたいこと」と「実際に書いていること」のズレが起こり、そこが指導のポイントになっていることが明らかになった。 今後の研究の展望としては、本研究で開発したシステムを活用して「レポートを書くプロセスのデータ」と「指導に関するデータ」を大量に取得、分析することで、システムによって「振り返り支援」を自動化できると考えられる。
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