近年インターネットを利用する高校生の間で,インターネット依存が社会問題となっている。そして,このような状況を改善するためにインターネット依存を予防,改善することを目的とする教育を行うことが喫緊の課題となっている。そこで本研究では,高等学校の情報科教育で実施可能な,インターネット依存の予防,改善のためのカリキュラム開発を試みた。 まず,各学校の情報科教育のカリキュラムに柔軟に対応できるよう,3時間,5時間,9時間で実施可能なものを開発することとした。次に,鶴田(2012)や鶴田・野嶋(2015)などの教育実践を通して得られた知見をもとに,R-PDCAサイクルの活動や,日常生活や学習の利便性を高める有効なインターネット利用を促す活動などを中心とする単元を開発した。そして,2015年度と2016年度に計6校の高等学校において授業実践を行った。そして,授業実践前と授業実践後に実施した鶴田ほか(2014)によって作成された高校生向けインターネット依存傾向測定尺度による質問紙調査や,授業前後での生徒自身のインターネット利用に関わる自意識や行動の変容についての自由記述形式の調査などの分析を通して,実践の成果と課題について検討した。 その結果,実践した学校の多くの生徒のインターネット依存傾向が,概ね全体的に改善されていることが確認された。したがって,本研究で開発したカリキュラムは,生徒の依存傾向の改善に有効であることが示唆された。 今後は,開発したカリキュラムの更なる精度の向上と,小学生や中学生を対象とした教育実践研究が必要であると考えられる。
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