従来の専門家育成教育は、「専門家を志望する学生」と「その専門知識に精通した教育者」で構成された閉鎖的な集団内で進められていた。本研究では、異なる文化を持つ他者との創発的な課題解決を目指した経験学習プログラムであるサービスラーニングに着目し、サービスラーニングが専門家育成にもたらす効果を定量的に検証することを目的としている。具体的には、専門家育成教育を志向したサービスラーニングにおける学生の学習過程と教育効果を定量的に解明することを狙いとしていた。 4年計画の最終年度として、平成30年度は、これまでに実施してきたサービスラーニングプログラム(熊本県立大学「もやいすと育成プログラム」)の成果の定量的な検証を行った。具体的には、サービスラーニングの活動中に、学生が誰とどのようなやりとりを行いながら、何を学び、どのような能力を向上させるか(学生の学習過程と教育効果)を測定した。その結果、学生は一緒に活動したメンバーや地域住民、プログラムに参画した学生アシスタントのそれぞれから学びを獲得し、汎用的能力や地域貢献意欲、地域における就業意欲を向上させている可能性が示唆された。本研究の当初の調査対象は、技術者育成を志向した教育プログラムであったが、調査の継続が難しくなったことから、平成28年度より地域貢献人材としての専門家育成教育プログラムである熊本県立大学の全学サービスラーニング授業科目「もやいすと育成プログラム」への調査を開始した。本年度に得られた研究成果は現在、学術誌へ投稿準備を行っている。
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