研究課題/領域番号 |
15K16273
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
小林 学 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (60447555)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リチャード・トレビシック / ロバート・スチーブンソン / ウィリアム・フェアベーン / 蒸気機関 / 橋梁 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、「リチャード・トレビシックの新発見手稿の出版と彼の再評価にむけて」と題した発表を日本科学史学会第63回年会にて平成27年度の報告書で書いたように予定通り発表した。トレビシックの未発見手稿が東京に存在した等の報告内容に大変な反響があった一方で、その手稿の真贋についても質問があった。これについては、よく検討する必要があると感じている。 土木技術については、特に橋梁の建設技術に着目している。設計に使用した理論と橋の形態について検討を続けており、具体的な技術者と科学者との共同や、当時の理論の詳細と橋梁の形状といったミクロな研究を続けている。一方で、個人の役割を超越した橋梁形状の内的発達法則について着目するようになった。 具体的な物質である技術のあり方は、地域の環境や人間社会の要請(社会グループや個人の好み)、特に経済性に影響を受ける。一方で、技術は自然法則に規定される。人間の都合で自由に変更はできないが、自然法則に反しない限り、様々な技術が可能である。ところが、技術の外的要因に強く影響を受けつつも、結果としては技術の内的論理に影響を受けたある特定の技術が発展することになる。これが技術の内的発達法則と言われるもので、石谷清幹氏が強く主張したことで知られている。再度、その重要性を認識したのは、研究代表者がコーディネーターを務めた日本科学史学会第63回年会でのシンポジウム「日本における技術史研究の現状と展望」における木本忠昭氏の発表「技術史研究の課題」(これは『科学史研究』280号に所収)である。この発表で木本氏は電信技術の発達を例に技術の外的要因との関係の中で技術展開の内的の論理を明確に述べられた。研究代表者は、技術者・科学者らのコネクションに着目した研究をここ数年追求してきたが、技術の内的発達法則の研究もまた必要であると認識し、この方針に沿って研究を見直している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日程の調整が出来ず、英国への出張を取りやめたなどしたため、研究の進捗に若干の遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、資料調査のため英国への出張を行い、研究の体制を立て直す。 「蒸気機関と熱理論との相互関係」については、平成28年5月に口頭発表した「リチャード・トレビシックの新発見手稿の出版と彼の再評価にむけて」について、論文または研究ノートにまとめるべく研究を加速させる。 「土木技術と材料理論との相互関係」については、特に橋梁の形状の展開の理由を、技術の内的発達法則によって解明するための基礎的な調査を行う。 「18-19世紀の指導的技術者が使った工学理論の水準と具体的な設計との相互影響」については、上記の研究成果を踏まえた上で、当時の工学理論の展開と具体的な蒸気機関・土木技術の設計・形状との関連を研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
英国への出張をしなかったことが大きな理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
研究上必要な資料や物品等の購入費・海外渡航費等に充てる見込みである。
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