平成30年度は、資料調査・情報収集のため英国へ出張を行い、さらに補助事業期間全体の研究をまとめるべく3度の研究発表を行った。 「土木技術と材料理論との相互関係」については、「ブリタニア橋の再評価――橋梁技術の史的展開メカニズムの解明に向けて」を口頭発表し、橋梁技術史全体の中にブリタニア橋を位置づけようと試みた。 「蒸気機関と熱理論との相互関係」と「18-19世紀の指導的技術者が使った工学理論の水準と具体的な設計との相互影響」については、「トーマス・ベドーズとイギリスの科学者・技術者共同体」を口頭発表した。 これまでのベドーズは化学者・医師・社会改良家として見られ、もっぱら科学者・技術者間の情報の連絡役との史的評価を受けてきた。本研究ではベドーズの技術・技術学の業績を、これまでベドーズの研究には用いられてこなかったとみられるRoyal Institution of Cornwallの史料を使うことで新しい知見が得られないか調査した。 さらに口頭発表「ジェームズ・ワット再考――ワット没後200年、ワットの分離凝縮器を含む蒸気機関改良に関する1769年の特許250年によせて」としてジェームズ・ワット研究の過去・現在・未来に関する展望を紹介した。 補助期間全体の成果の一つとして、橋梁技術の史的展開を理解する見方を提起したことがあげられる。橋梁の形式は、一般に桁橋・アーチ橋・トラス橋・斜張橋・吊橋に分類でき、この順で最大支間長は大きくなる。しかし、歴史的にはこの順で発明されたわけではなく、さらに使用される材料によっても最大支間長は変化する。こういった複合要因により、ある一定の基準で橋梁技術を時代区分することが困難になっていた。本研究では、これについて一定の見通しを得た。さらに研究を進めた成果は令和元年5月の日本科学史学会にて発表した。他の補助期間全体の成果は研究成果報告書に記載する。
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