研究課題/領域番号 |
15K16275
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
西本 寛 愛知大学, 法学部, 助教 (40609757)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射性炭素年代測定 / 保存科学 / 考古学 / Py-GC/MS / 高級アルコール |
研究実績の概要 |
本研究は、保存処理された遺跡出土木材の放射性炭素年代測定を実現するための方法論の開発・確立を目指すものである。特に、セチルアルコールやステアリルアルコールといった高級アルコールが含浸された木材の正確な年代測定を目的としている。高級アルコールによる遺跡出土木材の保存処理が行われた場合、木材中には高級アルコール由来の炭素が混入することになる。木材の放射性炭素年代測定を行う場合は、洗浄処理によって高級アルコールを除いて木材由来の炭素のみを抽出する必要があるが、放射性炭素年代測定に影響を与えないレベルで高級アルコールを除去できるかを検証した事例は存在しない。そこで、本研究では高級アルコールを含浸させた木材を洗浄し、含浸前の木材と同一の年代が得られるかを検証する。現在までに高級アルコール含浸木材の洗浄処理は終了しており、今後はこれらの試料の放射性炭素年代測定を行うことで、高級アルコールが除去可能か否かを明らかにする。 高級アルコールを洗浄処理によって除去できなかった場合でも、残存量を見積もることができれば放射性炭素年代を補正することで正しい年代値を明らかにすることができる。残存した高級アルコールを計測する手法として、熱分解GC/MSを採用した。熱分解GC/MSを用いて高級アルコールや木材の熱分解生成物を明らかにすることができれば、試料中の熱分解生成物から残存高級アルコールを定量することができる。現在までに、熱分解装置及びGC/MSの測定パラメータ設定を行っており、今後は実際の試料の測定により残存高級アルコールの定量化を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高級アルコール含浸木材の洗浄処理については当初計画通りに進行しているが、熱分解GC/MSによる木材試料及び高級アルコールの分析が遅れている。熱分解GC/MSの熱分解装置として採用した機器が多量の木材試料や高分子の分析に適さなかったようで、不均質な熱分解が生じてしまう。熱分解にばらつきが生じると高級アルコールの定量分析が行えないため、熱分解の温度や時間といったパラメータを変更しながら最適な分析条件を探したが、現時点では安定した熱分解が実現していない。そこで、今後はこれまで用いていたキュリーポイント型の熱分解装置を、電気炉型の装置に変更して分析を行う計画である。
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今後の研究の推進方策 |
今後行う実験として、洗浄済み木材試料の放射性炭素年代測定と、木材及び高級アルコールの熱分解GC/MSによる分析を計画している。熱分解GC/MSについては装置の問題から分析が遅れているが、現在手配している新しい装置を用いて2016年の夏頃には分析を終える予定である。2016年度は本申請課題の最終年度であるため、2016年の夏以降は実験データの解析や論文執筆、学会発表等に注力する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験で必要となる熱分解装置をリース契約で利用していたが、この熱分解装置が本研究の分析に適さなかったため、当初計画よりもリース期間が短くなった。よって、次年度使用額が生じた理由は、当初計画よりも熱分解装置のリース代金が安価になったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、新たな熱分解装置を手配しており、この装置のリース代金として次年度使用額を利用する計画である。
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