研究実績の概要 |
本研究は、博物館における従来の微生物モニタリングへ、生体蛍光を利用したリアルタイム浮遊菌測定を取り入れ、野外などの影響を受けやすい自然共生型博物館における正確性の高いゾーニング方法の確立を目指すものである。 第1年次である2015(平成27)年度は、同一区画内であれば従来の培地法による浮遊菌測定と非培養法であるリアルタイム浮遊菌測定法(バイオエアロゾル測定)に相関がみられることや、短時間的な微生物環境の変化の検出にはバイオエアロゾル測定が有利なこと、博物館施設では区画によってバイオエアロゾルに含まれる浮遊菌の存在比が大きく異なる場合があり、単純に代替することはできないことなどが明らかになった。(『保存科学』第55号, p103, 2015) 2年次では、モデル施設おいて瞬間的・短時的に変化する外気由来微生物や来館者の影響の把握について実験を行った。施設内の隣接する複数の区画において、同時に測定を行うことで、外気の影響を受ける区画や展示室とその周辺の区画について定量的な分類が可能であった。また来館者を要因とした、展示室における一日のうちのバイエアロゾル変化を検出することができた。バイオエアロゾル測定を用いることで、博物館施設におけるより正確性の高いゾーニングが可能であることが示唆された。(『保存科学』第56号, p89, 2016) 3年次である本年度は、モデル施設である三重県総合博物館の施設平面においてバイオエアロゾル測定によるゾーニングを行い、汎用性の検証を行った。複数台のバイオエアロゾル測定器を同時に用い、その相関をみることで博物館施設内の区画の分類が可能であり、数値的根拠をもとにした、従来よりも正確性の高いカビに対するゾーニングをより簡易に行うことができた。この結果はIPM のスキームにおける1.Avoid: 回避、2.Block: 遮断へ有効に適用できるものである。
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