研究課題/領域番号 |
15K16281
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研究機関 | 兵庫県立人と自然の博物館 |
研究代表者 |
橋本 佳延 兵庫県立人と自然の博物館, 自然・環境再生研究部, 主任研究員 (60372140)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 植生調査資料 / データベース / アンケート / WEB / 試験公開 / ヒアリング / アーカイブ |
研究実績の概要 |
植生調査資料は過去の自然の状況を知る上で貴重な自然史情報である。戦後に収集された記録のほとんどは研究者らが保管しているため、彼らの退官や死去で散逸する危険性が高い。オンライン公開が進んでいる標本情報に対し、植生調査資料は研究者らが原票で保管している場合が大半で、電子化されていてもフォーマットは多様、オンラインでアクセスする環境も整っていない。そのため、植生調査資料は一部が論文等で出版公表されているだけで、大半は広く社会で共有されず、研究者等の退官とともに消失する。これら植生調査資料を地域の自然史の解明や新しい知見の発見、生物多様性の保全のために有効活用するには多くの利用者が自由にアクセス出来る環境を整えるべきである。 そこで本研究では植生調査資料の社会的共有の促進に貢献する運用方法を確立するための知見を得ることを目的とした。 今年度は、1年目に構築した公開型の植生調査資料データベース(β版)の試験公開を行うとともに、8000調査地点の植生調査資料をデータベース上にアップロードした。 また、植生調査資料データベースの公開のあり方に関するアンケートを植生研究者・調査者に実施し得られた45件の回答を解析した結果、植生調査資料データベースの利用者としての期待と、自身の植生調査資料を公表する際の不安についての傾向が明らかとなった。さらに、国内の主要な植生学研究室を主宰する研究者2名に対して大学研究室における植生調査資料のアーカイブの現状や、今後アーカイブを維持していく上での課題についてヒアリングを行い、大学研究室でのアーカイブが困難な状況について把握した。 なお、上記の中間成果について3件の学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目に構築した公開型の植生調査資料データベース(β版)の試験公開を行うとともに、8000調査地点の植生調査資料をデータベース上にアップロードできており、当初の予定に近いペースを維持している。またアップロードしたものも併せて約10000調査地点の植生調査資料のデジタル化を完了している。データベースの改良点は軽微なものが多く出戻りが少ない状況である。 アンケート調査については平成28年度末までに45件の回答が集まり、傾向を把握するのに必要な最低限の情報は得られたものと理解している。 主要な植生学研究室を主宰する研究者や退職した植生研究者への植生調査資料のアーカイブの現状と課題についてのヒアリングを2件実施する事が出来た。このことで、ヒアリングにおいて必要な質問項目も明瞭となってきており、3年目に実施する全国各地の植生学研究者のヒアリングに反映できる成果が得られている。 中間報告ではあるものの3件の学会発表も実施でき、研究成果の公開も順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
試験公開している植生調査資料データベースへの登録資料件数を10000点以上となるように引き続き植生調査資料のデジタル化、アップロードを進める。 植生調査資料データベースの公開のあり方に関するアンケートの解析結果について論文化し、成果を公表する。 主要な植生学研究室を主宰する研究者や退職した植生研究者への植生調査資料のアーカイブの現状と課題についてのヒアリングを、全国各地の植生学研究者に対して実施し、日本国内における植生調査医療のアーカイブの量や質を把握するとともに、それらの物理的継承やデジタル化、公開に向けての課題を抽出し、成果を取りまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に試作した植生調査資料データベースシステムβ版の修正費用を平成28年度予算に組み込んでいたが、大きな修正が発生せず、修正費用がかからなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
植生調査資料のデジタル化、データベースへのアップロードの迅速化や掲載点数の増加に充てる。 また国内の主要な植生研究室を主宰している研究者(退職者を含む)のヒアリング件数を増やす事に充てる。
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