研究課題/領域番号 |
15K16286
|
研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
鈴木 重雄 立正大学, 地球環境科学部, 講師 (40581476)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 土地利用 / 植生 / 景観 / 地理情報システム / 耕作放棄地 / 空中写真 |
研究実績の概要 |
本研究は、1960年代以降の社会経済的な外因によって生じた農村地域の植生景観の変化に、主要な栽培作物の違いや立地環境の違いがどのように影響を及ぼしているかについて、地域間で比較検討をすることが目的である。その中では、1940年代以降の空中写真判読による相観植生データを地理情報システムや空間統計学的手法を用いて解析することにより、植生景観の変化の地域間比較法の確立を目指す。 本年度は、調査を行う5地域の予備調査により、植生の復元を行う5地域の選定を行った。また、養蚕地域とたけのこ生産地域においては、1940年代、1960年代、1980年代、現在の空中写真より相観植生データの作成を進めた。 この結果、特にデータの作成の進行したたけのこ生産地域(埼玉県比企郡滑川町山田集落)では、1961年に桑畑であった場所は、2009年には全て他の植生・土地利用に変化しており、その過半は樹林地、草地などの耕作放棄地へと変化したことを明らかにした。中でもアズマネザサ地を含む草地が28%を占めており、1981年以降に変化の見られない箇所も多かった。この事より、放棄桑畑にアズマネザサが侵入することによって、遷移の停止する箇所も多くあることが確認でき、今後の植生変化にも大きな影響があることが示唆された。 このことは、日本の耕作放棄地の植生学上の課題の一つであると考え、7月にアメリカ・ポートランドで行われた9th IALE World Congress内のシンポジウムでも紹介をした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、(1) 耕作放棄地を中心とする景観動態の調査を実施する5種類の調査地域について、予備調査を行い調査範囲の決定を行うこと、(2) 養蚕地域とたけのこ生産地域では、空中写真より相観植生データを作成することを予定していた。 これらを進めた結果、予定していたとおり農業形態の異なる5地域において、それぞれ2~10平方キロメートル程度の調査範囲の決定を行うことができた。さらに、養蚕地域(埼玉県比企郡滑川町山田集落)とたけのこ生産地域(千葉県夷隅郡大多喜町平沢集落)については1940年代、1960年代、1980年代、現在の空中写真より相観植生データの作成も進めることができた。空中写真判読後の、現地調査による分類の確認作業も大多喜町平沢集落ではすでに完了しており、おおむね予定通り進行している。 そして、養蚕地域における相観植生の変化については、一部範囲について解析を行った上で7月にアメリカ・ポートランドで行われた9th IALE World Congress内のシンポジウムで発表を行った。 また、相観植生データの作成を行う際に実施する空中写真のオルソ幾何補正は、予定よりも順調に進行したため、当初は次年度の予定としていた、平野型水田地域(滋賀県近江八幡市)についても作業を進めた。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画の通り進行しているので、今後も実施計画通りの進捗を図りたい。 平成28年度においては、平野型水田地域(滋賀県近江八幡市)と中山間型水田地域(広島県庄原市帝釈宇山集落)における相観植生データの作成を進めると共に、すでに植生データを完成させた養蚕地域、たけのこ生産地域における景観動態の解析とそれに影響を与えた要因の評価を実施していく。 平成29年度には、みかん栽培地域(山口県大島郡周防大島町和田集落)において、相観植生データの作成を進め、前年までに解析を終えた地域と合わせて、研究の統括を行う。 また、28年度からは、解析の完了した部分から順次、学会大会での発表や投稿論文のとりまとめを行い、研究成果の公表を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
オルソ幾何補正に用いる画像解析ソフトウェアが見積り時よりも、安価に購入することができたため、使用額が下回った。この価格変動は、主に為替相場に起因したものである。
|
次年度使用額の使用計画 |
当該差額については、平成28年度の現地調査旅費と、本研究成果の学会大会等での発表にかかる旅費として使用する計画である。
|