本研究は、1960年代以降の社会経済的外因によって生じた農村地域の植生景観の変化に、当該地域の主要な農業形態の違いがどのように影響しているかを地域間比較を中心に検討することが目的であった。最終年度は、柑橘類生産地域として調査地に選定した山口県周防大島町旧東和町の1947年、1965年、1981年、2002年の植生図の作成を行い、変化動態を明らかにした。さらに昨年度に引き続き、平野型水田地域の調査地とした滋賀県近江八幡市で淡水湖湖岸の植生を利用して成り立つ産業であるヨシ生産者からの聞き取りを通じて、ヨシ原利用の変遷と現在の利用状況を明らかにした。また、養蚕地域の調査地(埼玉県滑川町)と中山間型水田地域の調査地(広島県庄原市旧東城町)の植生解析を進めた。 加えて本研究では、植生変化の地域間比較を可能とするために、地理情報システムおよび空間統計学的手法を取り入れて、要因の検討方法の統一も目的としていた。これについては、養蚕地域と中山間型水田地域の植生解析の事例から、植生遷移系列を考慮した耕作放棄地・二次林等の面積変化を図示することにより、時代に応じた植生変化体制の比較手法を提案した。また、植生変化が生じた場所を定量的に評価する手法として、土地利用・植生図から求めた土地利用配置について、デジタル標高モデルより求めた傾斜度・斜面方位・地形湿潤指数や利用地からの距離等を説明変数とする多項ロジスティック回帰モデルによる手法を提案するに至った。 この成果を、日本地理学会2018年春季学術大会等の場で発表した。
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