大規模地震時に発生が懸念される大規模盛土造成地の滑動崩落のリスク評価手法として、中埜ほか(2012)による統計的側部抵抗モデルなどが提案されているが、このモデルでは過去の内陸直下型地震での事例を基にパラメータが決定されており、海溝型地震による検証が不十分であったため、2011年東北地方太平洋沖地震に伴う仙台市での事例を踏まえて、モデルで使用する最適パラメータを再解析した。その結果、従来の内陸直下地震対応型のパラメータと海溝型地震の場合の最適パラメータは異なることが示され、それぞれに最適なパラメータを改めて導出し、①内陸直下地震対応型、②海溝地震対応型、③両地震対応型の3つのパラメータを設定した。これらを従来の評価手法を組み込んだ評価支援システムで利用できるようにし、Excel上でも計算できるワークシートも作成した。 また、上記の評価に必要な盛土造成前の地形データを簡易に作成する手法として、三次元形状復元技術であるSfM/MVS技術を活用した手法を検討した結果、米軍空中写真を用いる場合、精度の高い地上基準点と通常の空中写真と同レベルのラップ率が確保できれば、写真測量による地形データと同レベルの誤差のデータが得られる可能性が示せた。ただし、SfM/MVSによる地形データはデジタル表層モデル(DSM)であり、山間地の谷部や市街地ではデジタル標高モデル(DEM)との差が大きくなるため、3×3メッシュ内の平均値や最低値を取得するようなフィルタリング処理等による補正が必要となる。
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