1. 観測変数と制御変数からなる平面上のインパルス制御問題において、利益関数に対する制約条件について調べた。下側制御のスムースペースティング条件を適切に変形することで、利益関数が逓増型でなければならないことが分かった。これは一般的な経済学の理論とは異なるため、さらなる調査が必要である。特異制御問題に対するスイッチング分解の先行研究であるGuo and Tomecek (2008)においては、逓増型でも逓減型でも解が得られていることから、インパルス制御問題と特異制御問題の違いに由来していると考えられる。 2. 絶対的リスク回避度一定型利益関数下での数値計算では、ある市場価値でスイッチングが起きたとき、それが上側スイッチングか下側スイッチングかを問わず、ある1つのキャパシティレベルになるという結果が得られた。これは、ある1つの総生産の規模(1人当たり生産量)に対して、ある一定の総資本ストックの規模(1人当たり資本ストック)に収束するとされるソロー成長モデルと整合的である。この成果は、平成30年度数理解析研究所共同研究(公開型)他で発表した。 3. 今年度より、本研究課題を基課題とした国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)課題「平面インパルス制御を用いた環境投資問題への確率的アプローチ((国際共同研究強化)」によって、カリフォルニア大学サンタクルーズ校での在外研究期間となり、Yihsu Chen准教授との共同研究を開始した。理論的整合性だけでなく、実務的な応用に関する知見が複数得られた。
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