研究課題/領域番号 |
15K16292
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
佐々木 康朗 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 助教 (70743772)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / 意思決定 |
研究実績の概要 |
本研究は、多主体意思決定の数理モデルであるゲーム理論において、特に意思決定主体の認識の多様性やそのダイナミズムを考慮した理論モデルの構築と応用を目的としている。平成27年度は特に基本モデルの構築を目的としていたが、従来研究されている、ハイパーゲーム理論あるいは気付きを考慮したゲームモデルの枠組みをベースに、意思決定者の認識の階層を考慮したモデルを提示し、その性質について数理的に分析した。例えば、既存の不完備情報ゲームとの関係性を整理した。また、このモデルをもとに、ゲームの中、あるいはゲームを繰り返し行う過程での意思決定主体の認識の変化に関する分析も行った。特に、意思決定主体の認識とゲームの結果が整合的であるような均衡概念を定義し、数理的に特徴付けた。 このような議論は、ゲームの構造に関する共有知識を仮定する標準的なゲーム理論ではそもそも問題とならないが、人々がゲームを主観的に認識しプレイしていると考えるのは現実的であろう。このようなより現実的な設定を導入し、様々な社会現象に豊かな考察を与える枠組みを提供するのが本研究の意義であるが、今年度はそのための基本モデルを構築したところである。また、これに基づいたいくつかの応用分析についても、研究に着手しているところである。 以上の成果は、1件の査読付き国際論文誌掲載、2件の国際会議報告(査読付き)にて発表した。この他に1件の国際会議報告(査読付き)が受理済みであり、また2件の論文を国際論文誌に投稿し、現在審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記した通り、平成27年度は特に基本モデルの構築を目的としていたが、これを概ね達成し、いくつかの論文、国際会議などで報告した。以上のことから、研究初年度である今年度は、順調に研究が進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方向性としては、大きく二つある。一点目は、平成27年度構築したモデルを拡張し、より広い社会現象を扱えるような枠組みを提示することである。例えば、多属性意思決定のゲーム理論モデルにおいて、認識の多様性を考慮したモデルの構築を試みている。このような理論的枠組みの持つ性質を数理的に精査する。二点目は、これを実際の社会科学的課題に応用し、新たな知見を得ることである。例えば、知識マネジメントの分野では、知識の伝達、共有がどのようになされるかが主要な論点の一つであるが、本研究の成果を活用して、知識が偏在している状況下での合理的意思決定者間の相互作用として、このような問題を扱えると考えており、すでに基礎的な分析を始めているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費支出額が当初見積りよりも少なく済んだため。(特に、図書購入が当初見積りよりも少なくなった)
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次年度使用額の使用計画 |
複数回の国際会議報告を予定しており、そのための出張旅費に充当する。
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