本研究課題は、多主体意思決定の状況において、意思決定主体の認識の多様性やそのダイナミクスに焦点を当てて、理論モデルの構築および応用を行うことを目的としている。前年度まではゲーム理論的枠組みにもとづく理論モデルの検討が主であったが、当初計画していた通り(ただし、一年間補助事業期間を延長している)、最終年度である本年度は、応用研究として、知識マネジメント分野での実証研究を実施した。前年度までに、システム思考と組織的知識創造の結びつきを概念的に整理したが、これはいわば仮説メカニズムの提示であった。今回、国内の企業等勤務者を対象としたアンケート調査のデータに基づき、統計的な実証分析を行った。結果、システム思考に関するある種の行動特性が、特定の知識創造プロセスに有意に影響を及ぼしていることが明らかになった。これは、組織に関与する人々の状況認識や問題への取り組み方が、組織のダイナミクスを通じて、知識創造のあり方に影響することを示唆するものである。この結果は、経営学関連の著名な国際会議にて報告した。
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