研究課題/領域番号 |
15K16299
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
井ノ口 宗成 静岡大学, 情報学部, 講師 (90509944)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 防災 / 危機管理 / 生活再建支援 / インタラクティブモデル |
研究実績の概要 |
本年度では、①ヒアリング・モニタリング調査に基づく業務と情報の構造化分析、②クラウド・行政・被災者の3 システムの統合的かつ有機的なデザイン設計、の2つの研究事項の達成を予定していた。 ①については、平成26年度から27年度にかけて、岩手県で実装された「岩手県被災者台帳システム」を対象として、岩手県下での東日本大震災にかかる対応実態をヒアリング調査し、その成果をBFD(Business Flow Diagram)手法により、構造的な分析を実施した。とくに、業務の構造を明らかにするとともに、行政と被災者とのインタラクティブな対応過程における情報送受の実態を把握し、それらの項目の洗い出しを実施した。また、事前に収集・蓄積可能な情報を同定し、その効率化を図るべく、データモデルの構築を推進した。 ②については、クラウド版としての被災者台帳システムを対象として、被災者自身での情報収集を可能とするために、行政が管理すべき情報と、被災者が管理すべき情報を精査し、その管理データベースの設計・構築を実施した。一方、行政では扱う情報の性質から、LGWAN(総合行政ネットワーク)上にシステムを展開するため、同一のデータベースを外部から直接参照することはできない。そのため、中継役となる機能を配置し、必要情報のみをLGWANから外部データベースに排出する必要があった。また外部からアクセスできるクラウドでは、他のウェブページとも連携できるため、被災者へ配信される被災者生活再建支援にかかる行政情報に加え、外部機関が発信する情報を1つのアプリケーション内に配置する機能の設計・開発を進めた。情報配信側でのセキュリティ対策から、全情報をアプリで収集・表示することが困難であり、画像化を通した一時的な配信技術についても実装を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①ヒアリング・モニタリング調査に基づく業務と情報の構造化分析、②クラウド・行政・被災者の3システムの統合的かつ有機的なデザイン設計、の2事項について一定の成果を得ている。平成28年度に実施するシステム設計・開発に対して、業務範囲を設定することで、システム実装まで至ることが可能な状態である。また、本研究を進める過程で、自治体の理解も深まり、研究推進の体制が強化されたため、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、当初の予定通りに「情報共有過程に近距離通信を用いたシステム設計・開発」と「被災地現場におけるプロトタイプ版の実証検証」を実現する。 前者に対しては、スマートフォンを被災者が有するデバイスとして位置づけ、近距離通信(NFCタグ)を活用した情報の送受を実現する。平成27年度の成果を踏まえて、情報の構造を適用し、また、スマートフォンで稼働するアプリケーションならびに、被災者生活再建支援にかかる既存のシステムからの情報抽出機能・NFCを通した情報送信機能等の設計・開発を進める。基盤となる外部のクラウド基盤となる情報管理のためのデータベース実装も推進する。 後者に対しては、各種機能を1つのアプリケーションとして構築した「プロトタイプ版」を、被災経験のある現地に持ち込み、その検証を行なう。平成27年度にも、いくつもの災害が発生しており、被災地の数は増えている。しかし、プロトタイプ版の検証という観点から、必ずしも完全稼働すると限らない部分もあるため、実現場での検証は困難である。申請時に記述した東日本大震災の被災地や福知山豪雨災害の被災地では、比較的、対応が落ち着きを取り戻しており、第一弾の検証の場としては適切であると考えられる。これらへの実装および検証を通して、アプリが有する課題の同定ならびに解決策の検討を推進する。
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