本年度は、以下の2点について研究を行った。 (1)放射線通過によるカメラ画像中のノイズ量から放射線量を推定する手法を応用し、ネットワーク型防犯カメラによる放射線警報システムを提案した。本手法は、防犯カメラに入射したエネルギーの高い速中性子がCCDやCMOS等の各画素に恒久的な放射線損傷を生成されることを利用して、放射線検知を行うものである。放射線起因のホットピクセル(輝度値が恒常的に高い画素)の個数と照射線量(中性子)に線形性が、本研究により確認されている。本システムは、特に遮蔽された核物質や臨界を用いた放射線拡散装置の中性子探知に有効である。本成果をまとめた論文は、日本核物質管理学会において優秀論文賞を受賞した。また、European Physical Journal Plus誌に投稿し受理された。 (2)原子力災害や放射線取り扱い施設の火災、そして核物質やその他の放射性同位元素を用いたテロ等の放射線緊急時における核種同定の手法について検討した。放射線緊急時の初動現場における低エネルギー分解能検出器を用いた測定について、既存のエネルギーピーク判定のみによる核種同定に、放射線緊急時の事前情報やスペクトルの全体的な形状も考慮した信頼度を表示する核種判定法を検討した。市販されている核種同定可能なガンマ線スペクトロメータ6種類を用いて天然ウランや各種RIで間違いやすい核種とその原因を探った。また、放射線緊急時の事前情報から、想定される核種をあらかじめ確率分布化しておき、光電ピークによる核種判定を受けて、最終的な核種確率分布を導出する。本手法は放射線緊急時のリスク評価に有効な手段と考えられる。
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