本研究の目的は,撮影条件が異なる光学センサ画像と高解像度合成開口レーダ(SAR)画像を地理空間情報として融合する手法を開発し,自然災害後に短期間で得られる多様な衛星画像を用いて被害を早期に検出することである。 本年度は昨年度が作成された橋梁がSAR画像における後方散乱モデルを基づき,2011年東日本大震災後の1時期SAR画像とGISデータを用いて橋梁被害の検出を行った。橋梁のGISデータがないため,水域に渡る道路を橋梁と見なし,抽出した。解像度が異なるTerraSAR-X衛星画像と航空機Pi-SAR-X2画像を用いて,同一橋梁の被害検出を行って,解像度と観測角度による違いを比較した。また,Pi-SAR-X2は全偏波画像であるため,偏波による被害検出の有効も検討した。 2016年熊本地震においては,地震前後のALOS PALSAR-2全偏波画像を用いて,テキスチャ特徴量による土地被覆分類を行った。4偏波から得られた計32のテキスチャ特徴量を用いて主成分分析を行い,最も情報量が多い3バンドを教師つき分類に使用した。事前の土地被覆結果はJAXAが公開した10mの土地被覆マップと比較し,精度の検証を行った。地震前後の土地被覆分類結果から,益城町の被害分布を推定したが,解像度の影響で建物被害が抽出されなかった。 また,熊本地震後のPi-SAR-X2画像を用いて益城町における建物の被害抽出を行った。益城町に多くある切妻屋根の木造住宅と平屋のコンクリート建物の後方散乱モデルを構築し,構造による違いを検討した。また,被害なしと被害ありの木造住宅の反射モデルを比較し,被害抽出の可能性を検討した。 これまでの研究結果をまとめ,査読雑誌と学会に投稿した。
|