研究課題/領域番号 |
15K16314
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研究機関 | サレジオ工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山下 幸三 サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (20609911)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 雷 / 積乱雲 / ELF / VLF / 極端気象 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、前年度に引き続きELF-VLF帯電磁界計測に基づいた雷観測の準リアルタイム化を目的とし、(1)雷観測網の安定運用に向けた観測システムの確立、(2)観測網各点において一次処理された観測データの統合アルゴリズムの確立、(3)雷データの共有化、の3項目に取り組んだ。(1)では日本国内・東南アジア域において記録データ量の削減を目的とした自動解析システムを各観測点で稼動させ、観測システムの試験運用を実施した。ソフトウェア面では各観測点における記録データの一次処理アルゴリズムに、ハードウェア面では長期運用における安定動作に主眼を置き、課題抽出・改善に取り組んだ。前者では、日本関東圏を対象とした雷観測(100kmスケール)と東南アジア域を対象とした雷観測(1000kmスケール)の各々に適したパラメータ抽出を可能とするよう観測ソフトウェアを改定した。後者では、安定動作の阻害要因となる項目が見つかったが対応策も定まり、次年度も課題抽出・改善に取り組むこととした。(2)では多点観測網の各点で得られた一次処理データ(前項(1)で抽出)を統合し、準リアルタイムで雷分布を導出することを目的としたアルゴリズムの開発と課題抽出に取り組んだ。データ統合アルゴリズムを確立すると共に、解析結果から得られた課題は前項(1)におけるソフトウェア改定に反映した。(3)では、関連する研究者・企業と前項(2)で取得した雷データの共有化を進め、気象レーダデータや地上静電界データ等との比較に取り組んだ。積乱雲の早期検知において有効性が高いと考えられる雲放電検出を、他手法に比べ観測コストが大幅に低いELF-VLF帯電磁界計測で実現できる可能性を示す結果を得て論文化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)観測システムの確立に向け、試験観測を通して観測システムの課題抽出・改善にソフトウェア・ハードウェア両面から取り組んだ。ソフトウェア開発においては、記録データの一次処理アルゴリズムが確立した。ハードウェア開発では安定動作に関して一部課題が見出され対応に時間がかかったため、次年度も継続して動作検証に取り組むこととした。(2)データ統合アルゴリズムの確立では、日本国内・東南アジアにおける取得データを用いてアルゴリズムの検証に取り組んだ。項目(1)・(2)で得られた知見をまとめ、現在投稿準備中である。(3)雷データの共有化では、関連研究者・企業の協力により雷位置データの共有化と、関連気象データとの比較を進めた。取得雷データを用いた積乱雲形成の早期検知を検討し、結果は学術論文に受理されている。以上より、一部について遅れがあるが対応策も定まっており、概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は(1)観測システム確立と(3)データ共有化を中心課題として取り組む。(1)では、平成28年度に得られた課題に基づいて観測ハードウェアの動作検証に取り組み、観測システム全体の仕様を決定する。また、今後の雷観測網展開の基盤とするため、観測システムを構成するソフトウェア・ハードウェアの使用マニュアルを作成する。(3)データ共有化に関しては、関連する研究組織・企業と連携してデータフォーマットの確定、データ共有サーバの構築により共有体制構築を進める。研究成果は学会・シンポジウム等での発表と論文投稿により公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度当初はデータサーバ用PCの購入を予定していた。しかし、年度途中にて申請者が異動となったこと、サーバの購入・設定には新任校のネットワーク担当者との協議が必要となったことから、次年度にデータサーバ用PCを購入することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
雷観測で得られた雷データの共有を目的とし、データサーバ用PCを購入する。
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