研究課題
近年、気候変動・温暖化に伴う降水の極端化が懸念されている。強い降水は特定の年だけでなく、長期的に見ても頻度が増加していることが複数指摘され、さらに将来の温暖化気候においても、より極端化の傾向が強まるとIPCC第4次報告書で示されている。一方で、大気の振る舞いには、将来の状況を断定的には予測できないという性質(カオス性)があり、強雨などの短時間現象については予測の誤差が大きく難しいという現実がある。今後の予報や防災の体制を改善する必要があると考えられる。このカオス性によりアンサンブル予報データで生じる予報誤差を、事象のばらつきとみなすことにより、(極端)事象の発生条件や起こりうる可能性について統計的に扱うことができる。極端事象は過去の観測データには統計量が少ないため、このような情報を解析することが難しいと考えられる。本研究では次の点について議論し学会等へ発表した。まず、2015年9月に起こった鬼怒川流域における極端降水について調査した。咋年度までに用意した統計的に十分なアンサンブル予報データから、詳細な降水分布を得るために力学的ダウンスケーリングを実施し、当該災害は2つの台風が限られた経路で接近し水蒸気収束が強化されることで強雨が持続したことを示した。またこのような極端降水の元となる水蒸気量について、気候学的な日本域における水蒸気量と地上気温との関連性を観測データを用い、地上気温では拘束されにくい、境界層より上空の鉛直構造が気候変化に影響をを及ぼすことを議論した。さらに、熱帯域における同データの季節内擾乱の予報スプレッドに注目し、抽出された複数のマッデン・ジュリアン振動(MJO)が海洋大陸上の降水に与える影響を調査した。MJOの強度により海洋大陸城の降水強度が異なる点を明らかにした。
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