マイクロ流体デバイスを用いて形成されるコアシェル型細胞ファイバーを細胞培養・移植一体型デバイスとして応用することを目的に、線維芽細胞のファイバー内での培養、インスリン産生細胞への再プログラム化、および細胞ファイバーの移植技術の研究を実施した。 アルギン酸ゲルをシェルとし、コアのファイバー状三次元空間内でのヒト皮膚由来線維芽細胞の新規三次元培養系を確立した。その三次元空間内に任意の細胞外マトリクスを添加することで、線維芽細胞の細胞特性が変化することを見出した。様々な細胞密度と細胞外マトリクスの組み合わせを検討することで、線維芽細胞特性が最も高くなる条件を明らかにし、三次元培養環境の制御により線維芽細胞の若返り(rejuvenation)が可能であることを示した。その成果は平成27年度に国際学会で報告している。 最終年度では、前年度に確立した線維芽細胞ファイバーの培養環境を変化させることで、膵β細胞系譜への再プログラム化を検討した。特定の細胞内シグナル経路を活性化あるいは抑制可能な低分子化合物の培地への添加により、三次元培養下での細胞特性の変化を誘導した。内胚葉および膵前駆細胞の培養条件にすることで、ファイバー内線維芽細胞においても膵β細胞発生関連遺伝子の発現が誘導されることを明らかにしている。また、再プログラム化実験と並行し、薬剤誘導性糖尿病モデルマウスへの細胞ファイバーの移植実験を行ない、細胞ファイバーが細胞培養・移植一体型デバイスとして機能することを検証した。ヒト人工膵β細胞をファイバー化し、その後培養および動物への移植・取り出しが可能であることを明らかにしている。これら成果は、論文化および国際学会への発表準備中である。
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