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2015 年度 実施状況報告書

ナノ粒子の腫瘍組織での細胞取り込みを促進する新規シェル分子の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K16331
研究機関東京工業大学

研究代表者

武元 宏泰  東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (10709249)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード高分子科学 / 生体医工学 / バイオマテリアル / 生体材料学
研究実績の概要

本研究の目的はナノ粒子の腫瘍組織における細胞取り込みを促進する新規シェル分子の開発である。平成27年度の計画内容は、主に新規シェル分子の化学合成及びそのpH応答性評価、培養細胞における細胞取り込み評価である。実際に、新規シェル分子に相当する高分子の合成に成功し、そして異なるpH挙動を有する高分子(比較用の高分子)の合成にも成功した。それらの大量合成(~1g)を行った後に、腫瘍組織に相当するpH(~6.5)において細胞膜構成物質との相互作用を評価したところ、本研究にて開発された新規シェル分子のみが腫瘍組織内pH選択的に細胞膜構成物質と相互作用することが証明された。さらに、新規シェル分子に対して蛍光標識を施し、培養細胞に対してアプライしたところ、正常組織に相当するpH7.4では目立った細胞取り込みは観察されなかったのに対し、腫瘍組織に相当するpH6.7においては細胞取り込み効率が飛躍的に向上する様子が蛍光顕微鏡にて観察された。さらに、細胞取り込みを停止する温度(4℃)にて同様の実験を行ったところ、pH6.7においては新規シェル分子が細胞膜表面に吸着している様子が観察された。このことから、本研究にて開発された新規シェル分子が腫瘍内環境選択的にその特性を変貌させることで、正常組織に対してはステルス性を発揮するが、腫瘍組織において細胞膜に吸着することで細胞取り込みを促進可能であることが証明された。さらに、開発された新規シェル分子の動物実験レベルでの性能を評価するために、血中滞留性評価及び体内動態評価を行う必要がある。それに先駆けて、平成27年度において新規シェル分子を量子ドットに対して導入する条件の検討を行い、その最適化に成功した。薬剤のモデル物質である量子ドット1個に対して新規シェル分子が平均して~30本導入可能であり、平成28年度に行う動物実験の準備を万全なものとした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究課題において、平成27年度では高分子合成の条件検討及び目的となる性能を有する高分子の開発・発見に重きを置いていた。結果として、培養細胞等を用いて目的となる性能を有する高分子の発見に成功し、さらにその大量合成を可能とする合成手法も確立した。さらに、平成28年度に重きを置いている動物実験に関し、主に使用される量子ドットを修飾した構造体の合成にも成功し、担がんモデルマウスの作成にも成功している。予備実験段階ではあるものの、すでに動物実験レベルでも本研究にて開発される新規シェル分子が既存のシェル分子であるポリエチレングリコールと同等の血中滞留性を示すことも確認している。以上により、平成27年度における本研究の進行は計画以上に進展している、と判断した。

今後の研究の推進方策

平成28年度においては、平成27年度にて発見された高分子を新規シェル分子の第一候補として用い、動物実験を主体とした研究計画を実行する。既に、平成27年度において、薬剤のモデル物質である量子ドットに対して効率的に新規シェル分子を導入可能とする方法が確立されており、担がんモデルマウスの作成にも成功しているため、速やかな研究計画の遂行が可能である。具体的には、新規シェル分子にて修飾された量子ドットを担がんモデルマウスに対して静脈投与し、その血中滞留性や体内動態評価、腫瘍への集積評価を実施する。同時に、比較対象として既存のシェル分子であるポリエチレングリコールあるいは異なるpH応答性を有する高分子でも同様の実験を行うことで、本研究で開発された新規シェル分子の有用性・実用性を明らかなものとする。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] 天津理工大学(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      天津理工大学
  • [雑誌論文] Influence of RNA strand rigidity on polyion complex formation with block catiomers.2016

    • 著者名/発表者名
      K. Hayashi, H. Chaya, S. Fukushima, S. Watanabe, H. Takemoto, K. Osada, N. Nishiyama, K. Miyata, K. Kataoka
    • 雑誌名

      Macromol. Rapid Commun.

      巻: 37 ページ: 486-493

    • DOI

      10.1002/marc.201500661

    • 査読あり
  • [雑誌論文] siRNA-loaded polyion complex micelle decorated with charge-conversional polymer tuned to undergo stepwise response to intra-tumoral and intra-endosomal pHs for exerting enhanced RNAi efficacy.2016

    • 著者名/発表者名
      M. Tangsangasaksri, H. Takemoto, M. Naito, Y. Maeda, D. Sueyoshi, H. -J. Kim, Y. Miura, J. -Y. Ahn, R. Azuma, N. Nishiyama, K. Miyata, K. Kataoka
    • 雑誌名

      Biomacromolecules

      巻: 17 ページ: 246-255

    • DOI

      10.1021/acs.biomac.5b01334

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Regulated protonation of polyaspartamide derivatives bearing repeated aminoethylene side chains for efficient intracellular siRNA delivery with minimal cytotoxicity.2015

    • 著者名/発表者名
      H. Gao, H. Takemoto, Q. Chen, M. Naito, H. Uchida, X. Liu, K. Miyata, K. Kataoka
    • 雑誌名

      Chem. Commun.

      巻: 51 ページ: 3158-3161

    • DOI

      10.1039/C4CC09859E

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Accelerated Polymer-siRNA Conjugation Based On Freezing-Thawing Treatment2015

    • 著者名/発表者名
      Hiroyasu Takemoto, Kanjiro Miyata, Nobuhiro Nishiyama, Kazunori Kataoka
    • 学会等名
      The 11th International Conference on Advanced Polymers via Macromolecular Engineering (APME 2015)
    • 発表場所
      神奈川県横浜市
    • 年月日
      2015-10-18 – 2015-10-22
    • 国際学会
  • [学会発表] PIC型siRNAデリバリーに向けたポリカチオン側鎖構造の改変と細胞内動態制御への展開2015

    • 著者名/発表者名
      武元 宏泰、Gao Hui、宮田 完二郎、西山 伸宏、片岡 一則
    • 学会等名
      第31回日本DDS学会学術集会
    • 発表場所
      東京都新宿区
    • 年月日
      2015-07-02 – 2015-07-03
  • [学会発表] 酸性pH応答性高分子を表層に搭載した高分子ミセルの構築とsiRNAデリバリーへの応用2015

    • 著者名/発表者名
      武元 宏泰、宮田 完二郎、タンサガサクスリ モンティラ、内藤 瑞、前田 芳周、キム ヒュンジン、西山 伸宏、片岡 一則
    • 学会等名
      第64回高分子学会年次大会
    • 発表場所
      北海道札幌市
    • 年月日
      2015-05-27 – 2015-05-29

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公開日: 2017-01-06  

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