細胞が分泌する膜小胞(エクソソーム)は、その内部にタンパク質やDNA、micro RNAを保持している。エクソソームは由来細胞のデータをコピーし受け手側の細胞へと情報を伝える役割を担っている。本研究では骨芽、軟骨、脂肪細胞などあらゆる細胞へ分化する能力を持つ間葉系幹細胞(MSC)に着目した。MSCの分化に伴い、放出されるエクソソームの機能も変化すると考えられることから、骨芽細胞分化前後でのエクソソームの機能比較を行った。 脂肪由来MSCおよび骨芽分化誘導したMSCからエクソソームを超遠心分離法によって単離した。透過型電子顕微鏡観察や粒径測定により約180 nm前後の脂質二重膜で囲まれた粒子が得られ、エクソソームマーカーやMSCマーカーのタンパク質発現、種々のサイトカインの含有を確認した。また、骨芽細胞が分化後期に分泌する石灰化の核となるエクソソーム様のマトリックスベシクルと呼ばれる小胞も同様に回収した。細胞との相互作用を見るため未分化MSCにエクソソーム又はマトリックスベシクルを添加して骨芽細胞分化培地で培養した際の石灰化への影響を評価したところ、骨芽分化細胞由来エクソソーム添加群では石灰化が抑制され、マトリックスベシクル添加群では顕著な石灰化促進が確認できた。さらに、骨吸収を担う破骨細胞への分化への影響についても同様の実験を行ったところ、骨芽分化細胞由来エクソソーム添加群で破骨分化が促進されるのに対し、マトリックスベシクル添加群では破骨分化が抑制されたことから、骨芽細胞から分泌されるエクソソームとマトリックスベシクルでは異なる機能を持つことが示唆された。現在はエクソソームおよびマトリックスベシクルの表面糖鎖の解析、比較を行っており、細胞との相互作用機構の解明につながると考えている。
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