研究実績の概要 |
MRI (Magnetic Resonance Imaging) は非侵襲・無障害な画像診断法で、空間分解能に優れている。MRIは生体内の水分子から核磁気共鳴信号を得て画像化しているが、組織や疾患によっては鮮明な画像が得られない場合があり、高感度なMRI造影剤の開発が急務である。今回、高感度なMRI造影剤の開発を目的としタンパク質ナノカプセルであるsmall heat shock protein 16.5を利用した。このタンパク質は内孔(8nm)を有するナノカプセル(外径13nm)を形成するため、造影剤Gd錯体を内包でき、また表面に様々なペプチドやタンパク質をを修飾可能である。ナノカプセルを発現・精製を行い、内部にGdを導入した。今回作製した4種類のタンパク質ナノカプセル(1-Nanocage, 2-Nanocage, 3-Nanocage, 4-Nanocage)の粒径測定を行うと、平均粒径はそれぞれ16.5、20.0、30.1、37.1 nmであり、N末端疎水性領域を付加させることによって、連続的に粒径が増大することが分かり、また単分散なナノカプセルであった。次に1.5 T オープン型MRIを用いてタンパク質ナノカプセル緩和能の測定を行った。造影剤Gd-DTPAはカプセル内側のシステインに結合させ、ICP-MSにより結合させたGd濃度を求めた。緩和能を測定したところ、ナノカプセル1-Nanocage, 2-Nanocage, 3-Nanocage, 4-Nanocageはそれぞれ14.9、16.5、34.6、46.4 mM-1s-1であり、サイズが増大するにつれ、緩和能の向上が見られた。特に4-Nanocageはおよそ40 nmのサイズで、通常の造影剤Gd-DTPAの10倍以上の造影効果を示した。これはタンパク質ナノカプセルのサイズや分子量、疎水性アミノ酸を導入したことによるナノカプセルの高分子効果や剛直性の増大によるガドリニウムと水分子の回転相関時間の短縮によるものと考えられる。
|