研究課題/領域番号 |
15K16333
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河野 喬仁 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 特任助教 (90526831)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノ材料 / DDS / 画像診断システム / 造影剤 / 分子イメージング |
研究実績の概要 |
画像診断法の発展は疾病の早期発見とその治療効果の改善にめざましい進歩をもたらしている。なかでもMRI (Magnetic Resonance Imaging) は非侵襲・無障害であることや、空間分解能に優れていることから臨床医学の現場において重要な位置を占めている。しかし現在使用されている主な造影剤はガドリニウム(Gd)錯体は緩和能が低いという問題があり、患者に大量の造影剤を投与しなければならない側面も持っている。QOLの観点からも高感度なMRI造影剤が必要である。 造影能に影響する因子として、Gdに配位する水分子の数・水分子の交換時間・Gd複合体の回転相関時間がある。特に回転相関時間を変化させる方法として、造影剤を高分子等に結合させる方法で水分子に対する造影剤の動きを制限し緩和能の上昇を得るが、回転相関時間の短縮と高分子のサイズに関する系統的な研究はまだ少ない。 本研究ではsmall heat shock protein 16.5(Hsp16.5)を利用した。このタンパク質は内孔(内径6 nm)を有するナノカプセル(24量体、外径13 nm)を形成するため、内部に造影剤Gd錯体を内包することができ、またカプセルの空孔内環境に疎水性アミノ酸などを導入することでサイズの制御可能である。そこで疎水性アミノ酸を導入した異なるサイズをもつタンパク質ナノカプセルを作製し、タンパク質ナノカプセルのサイズと造影能の相関を評価した。 MRI測定により、タンパク質ナノカプセルのサイズと緩和能には強い相関を示し、サイズの増大により緩和能の向上が見られた。これはタンパク質ナノカプセルのサイズや分子量、疎水性アミノ酸を導入したことによるカプセルの剛直性の増大による回転相関時間の短縮によるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高感度かつ疾患特異的なMRIナノ造影剤の開発ため、第一段階である造影剤の高感度化を検討し、ほぼ当初の目標通りの成果が得られた。カプセルの空孔内環境に疎水性アミノ酸を導入した異なるサイズをもつタンパク質ナノカプセルを作製し、高分子効果を利用したMRIシグナルを増強させる仕組みについても基礎検討を実施している。さらに膵癌マウスを用いたin vivo実験を計画中であり、当初の研究期間内に達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
現在はin vitroでの評価にとどまっているが、今後、in vivoの系において、動物実験を用いて膵癌モデルを作製し研究を推進する予定である。また動物実験の結果からフィードバックし、より血中滞留性が高く、特異性の高いタンパク質ナノカプセルを設計・発現する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、タンパク質ナノカプセル作製のための試薬や実験動物の消耗品費を計上していたが、現有する材料だけを用いて研究を推進することができたため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度ではin vivoにおける性能向上・妥当性評価を行う予定であるため、差額分を含めて実験動物等の消耗品費として研究費を使用する。また,海外および国内の研究成果発表のための旅費として研究費を使用する予定である。
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