研究課題
MRI装置のハードとソフト両面における進歩は、撮像の時間分解能や画像の空間分解能など画像診断情報の質を向上させ、MRIの対象領域をますます拡大している。しかしながらその撮影原理上、MRIによって病変部位を特異的に描出することは困難であり、ほとんどの場合、単純な形態診断法として使われている。この欠点を補完し、病変部位のコントラストを増強するために使われているのが主にガドリニウム錯体であるMRI造影剤である。既に肝臓・脾臓・骨髄といった網内系に特異的な造影剤が臨床において広く使われており、組織選択性という観点では大きな成果を上げている。しかし現在臨床で利用されている造影剤は癌などの特定の疾患に対する特異性は低く、未だ発展途上と言わざるを得ない。MRIを単なる形態診断から機能診断へと発展させるためには、病態の分子医学的情報に応答する新しい機能化造影剤の開発が不可欠である。本研究ではMethanococcusjannaschiiに由来するMj285が自己組織化によって形成するナノ構造体に着目し、その機能化を目的にする。この構造体は内孔(径8 nm)を有する球状構造体(24量体、外径13 nm)を構築することがしられている。X線結晶構造解析の結果、このタンパク質のC末端はカプセルの外表面に露出していることが明らかになっており、この領域に標的に対するアンテナ分子を組み込むことが可能である。そこで、膵癌特異的iRGD(cyclic(CRGDKGPDC))ペプチドをこのカプセル表面に提示することを試みた。ガドリニウムを内包させたナノカプセルを尾静脈投与すると、膵癌培養細胞であるAs-PC-1を移植した担癌マウス、さらには遺伝子改変した膵癌自然発生マウス(KPCマウス)の癌組織をMRIにより検出可能であることを確認した。
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