研究課題/領域番号 |
15K16335
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
神戸 裕介 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 派遣研究員 (30747671)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | キメラタンパク / メタボリックスイッチング / DDS / DNCS / バイオマテリアル |
研究実績の概要 |
生体内病因物質を捕捉し,異所代謝経路へ誘導する“Drug-Navigated Clearance System (DNCS)”研究では,「捕捉」と「誘導」の両機能を有した分子(ナビゲーター)の半合成が行われてきた.しかし,ナビゲーターの合成効率や機能が不十分で,in vivoでのDNCSの実証には至っていない.本研究では,複数の機能性分子の恒常的な融合及び一次構造レベルでの分子設計による機能増強・改変を可能とするキメラタンパク技術を利用し,DNCSの実証に取り組んでいる.本年度は,透析アミロイドーシスの病因となるβ2ミクログロブリン(β2MG)を肝臓へと誘導し得るキメラタンパクナビゲーターの作製とその機能のin vitro評価に取り組んだ.まず,遺伝子組換え大腸菌を利用し,アポリポタンパクEのN末端領域(ApoE-NTD,肝臓誘導分子)と主要組織適合遺伝子複合体のα3ドメイン(α3,β2MG捕捉分子)とがリンカーを介して融合したナビゲーターをコードするDNAを作製した.なお,D227Kの変異を導入するよう,α3のDNA配列を変化させた.作製したDNAを大腸菌用発現ベクターに組み込み,ナビゲーターの発現,精製を行った.次に,作製したナビゲーターの機能評価を行った.免疫沈降法により,ナビゲーターがβ2MGとの親和性を有することを確認した.これは,β2MGとナビゲーター中のα3との結合に起因すると考えられる.また,蛍光標識したナビゲーターと様々な濃度の市販のApoEとを肝臓細胞の培地に添加し,ナビゲーターと肝臓細胞との結合がApoEと競合することを示した.ナビゲーター中のApoE-NTDが肝臓細胞表面のLDLレセプターと特異的に結合したと考えられる.以上より,作製したキメラナビゲーターがβ2MG捕捉機能と肝臓細胞(LDLレセプター)結合機能を有することが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目的である,キメラタンパクナビゲーターの作製とin vitro機能評価を達成し,ナビゲーターが,in vitroにおいて,期待する機能を有していることが確認できたため.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は,in vivoでDNCSを実証することである.in vitroで機能を有しているナビゲーターが,in vivoでは機能を発揮しない可能性もある.今後は,実験動物も用い,in vivoでのナビゲーターの機能評価に取り組む.具体的には,蛍光標識したナビゲーターをマウス血中に投与し,その体内動態をイメージングする.これにより,ナビゲーターが肝臓に集積するか明らかにする.肝臓に集積しない場合,誘導分子を変更する必要があるため,候補分子の調査は継続して行う.肝臓集積能を有するナビゲーターが得られた後,ナビゲーターと蛍光標識したβ2MGを血中に投与し,ナビゲーターが血中のβ2MGを捕捉し,肝臓に誘導するか評価する.
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