研究課題/領域番号 |
15K16337
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
中林 正隆 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50638799)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオミメティクス / バイオメカニクス / 推進機構 / 医用工学 |
研究実績の概要 |
以下に研究計画の実施課題と実績について述べる。 1.ユーグレナの複合表皮帯構造を規範とした全弾性流体内推進器の製作(平成27年度計画):表皮帯に相当するリニアソフトアクチュエータとして、圧縮バネとフロロカーボン製のワイヤ、接続部には摺動性を得るために小型プーリを備えた弾性伸縮機構を作成した。本機構により伸縮運動は実現できたが、プーリ部の保守性が低く流体中で繰り返し運動を行うのは困難という問題が生じた。この問題はテフロンのアウターチューブのガイド構造にすることで解決した。上下格子状10本配置した弾性収縮機構とプラスチック薄板で構成された全弾性流体内推進機構は屈曲運動を実現した。 2.流体内推進器の制御系及び計測系の開発(平成27年度計画):制御系及び計測器系の作成のため開発システムLabVIEWの導入を行い、研究室既存のPCとの接続、単機モータでの同期制御を行う事に成功した。更に水槽や計測系に必要な浮動板などは完成し、計測系のおおよその要素は完成に至った。しかし既存PCの不具合・NI接続の問題が多く修繕のみで多くの時間が消費された。 3.機構の配置角度及び数量、伸縮率による屈曲運動の評価検討(平成28年度実施計画参照):上記課題2に当たり、時間をあまりに要するのは問題と考え、本課題を先行させる事とした。当初は機構の動的収縮を目的としたが、今期は基礎データの取得のため静的伸縮での実験により、配置数・収縮パターンと形状変化の関係を明らかにする事にした。伸縮機構数4本では各配置角度・収縮率によって屈曲運動など単独の形状変化が観測されたが複数パターンは困難と考えられた。次に10本配置した条件で試み、提案機構は収縮パターンと流体内推進機構の形状変化の対応が明らかになった。更に一部の伸縮機構の形状変化においてはユーグレナの表皮帯との相似性を見ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画において提案した弾性伸縮機構は改良を施すことによって、表皮帯と同様の収縮を実現することが可能になった。更に、それらを備えた全弾性流体内推進機構を作成し、複数の形状変化を可能にする最低限の弾性収縮機構の数・伸縮パターンと形状変化の対応に関して基礎データを得ることは出来た。また、その結果と先行研究における実際のユーグレナの表皮帯の変形形状とに相似性があることまで明らかになった。 しかしながら、当初の作成予定であった開発システムLabVIEWとサーボモータを用いた弾性伸縮機構の制御については、PCとシステムの不調の問題解決のために時間を費やされてしまった。そのため研究進行を考えて研究計画を前後させる必要が出たのである。このまま複数アクチュエータの同期制御にこだわった場合、システムの修繕と制御系の構築に時間を要することになり、全弾性流体内推進機構の流体力の計測・評価まで至るのは困難と考えられる。研究の早期進行を考えるならば、何らかの他の方策が必要であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の基礎データから動的な全弾性流体内推進機構を駆動させ、その推進力の測定を行う。前年度遅延してしまった制御系と計測系の製作を早期に完成させるため、弾性伸縮機構はカムリンクによるワイヤ駆動機構による単純な機械的同期制御を行うこととする。制御系は単一のサーボモータとし、伸縮機構の周期的な運動を行う構造として、制御的問題は最小限とするシステムを構築する。また既存PCも経年劣化により、修理を繰り返しながら制御系・計測系に利用するのは困難と考えられるため、新規に購入する必要があると考えられる。 また、構築した流体内推進機構の変形と推進力の関係を明らかにする上で、その流体力が微少すぎて既存のロードセルでの計測が困難になる可能性がある。その場合は新規に購入して対応することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度研究進行においてPCなど制御系に問題が生じており、その対応費用として次年度の使用を計画したため。
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次年度使用額の使用計画 |
新規PCの購入及び流体力の計測系に問題が生じた場合の対応費用
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