本研究では、胸腔鏡手術において手術器具を挿入する孔の位置が肋骨によって制限されている問題を解決するため、仮想孔の概念を用いた新しい手術支援システムの開発を行った。本システムを用いることで、外科医の意図した場所に仮想的に孔を設けて手術器具を挿入でき、肋骨等の解剖学的な問題に依らずに最適なポート配置で手術が行なえる。手術器具と内視鏡の配置関係は外科操作に大きく影響し、これまでは肋骨によって無理な配置で外科操作を行っているケースもあったが、本システムによって操作範囲の拡大や外科医の負担軽減が期待できる。また、設けた孔で癒着があった場合は新しい孔を設けることもあるが、本システムがあれば追加ポートを設ける必要がなく、整容性の向上につなげることができる。 昨年度は技術的な課題のため、当初の予定より進捗が遅れ、研究期間を一年延長した。平成30年度の研究計画として、臨床医からのフィードバックをもとに改良を進め、開発したシステムを用いた有用性評価を目標として掲げていた。結果として、2種類のプロトタイプと専用の把持アームを開発し、呼吸器外科医にヒアリングを行って本システムの実現可能性について臨床的な視点から評価を行った。実際に手に取って操作していただき、セットアップから具体的な操作まで、手術現場での導入方法について確認し、また単孔式内視鏡手術への適用可能性についても示唆いただいた。本研究の成果は、国内外で報告し、大阪商工会議所での講演では企業と技術的な意見交換を行い、IEEEの国際学会のEMBC2018ではポスター形式で発表し、海外の研究者や臨床医からも高い評価を得ることができた。
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