研究課題/領域番号 |
15K16341
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
青木 悠祐 沼津工業高等専門学校, 電子制御工学科, 講師 (70584259)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超音波診断・治療補助ロボット / メンタルローテーション能力 / 生体信号計測 / プローブ走査支援 / 意図推定 / 創発的医療支援ロボット |
研究実績の概要 |
本研究では超音波診断におけるメンタルローテーション能力のロボットによる再現を目指している.これにより患者側支援のみならず,医師側支援も可能とし,患者のための支援が結果として医師側の支援につながる,またその逆も起こりうるような創発環境の構築を狙いとしている.このシステム実現にあたり求められるのは(1)様々な体位の検査を可能とする医療支援ロボット,(2)メンタルローテーション能力・生体信号変化に基づいた疲労計測システム,(3)検査者・被検査者双方のための創発的医療支援のための制御システムの3点である. 平成28年度は(2)について実施した.超音波診断時に,検査者は臓器配置を理解し,プローブをどのように動かせば所望の断層像が撮像できるのかを導き出している.そこでこの空間把握能力をメンタルローテーション能力と定義し,その変換行列をメンタルローテーション行列とし,実験によりその値を計測した.また,診断部位や走査手技によって肉体的・精神的負担がどのように異なるかを調査するため,モーションキャプチャ・生体信号複合計測実験も行った.計測対象はプローブ走査軌跡と筋電図,脳波であり,筋電図に関しては右腕の撓側手根屈筋と上腕三頭筋を計測対象とした.この結果,モーションキャプチャシステムによって計測したプローブ位置・姿勢では変化が小さいため特徴を把握することが難しい部分も,メンタルローテーション行列の各成分に着目することで特徴を抽出することができた.また,体動による臓器の移動に合わせてプローブを走査する際,筋電図・脳波の平均周波数が増大していることから,肉体的・精神的に負担が増大していることが確認できた.このように,プローブ走査中の精神的・肉体的疲労を計測できるようになっただけでなく,プローブ走査の段階に応じてプローブ位置・姿勢と生体信号の関係性を議論可能なシステムを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に実施予定のテーマは「メンタルローテーション能力・生体信号変化に基づいた疲労計測システムの構築」であった.モーションキャプチャシステムおよび断層像処理システムから得たプローブや臓器の移動量をもとにそれらの関係性を示すメンタルローテーション行列を提案し,計測実験を重ねているのでおおむね予定通りに進んでいる.今後は実験データを増やし,熟練度の指標や個人差による影響等詳細を考察していく.また,生体信号計測システムを用いて,診断中の姿勢や被験者との位置関係による影響考察を行った.信号処理手法についてはSTFTやwavelet解析等複数の方法を検討している段階であるが,今後はこれらを1つのソフトウェアに統合し,様々な視点から診断中に検査者にフィードバックする仕組みを検討していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度のテーマは「検査者・被検査者双方のための創発的医療支援のための制御システムの構築」である.これまでの成果を統合し,所望の断層像取得・診断の妨げにならず,かつ検査者・被検査者の肉体的・精神的負担を軽減するためのハード・ソフト融合支援システムを構築する.そして「ロボットによる超音波診断支援が検査者の負担軽減につながるのか」について,定量的に検証を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
ロボット力センサ固定部,プローブ把持部および生体信号計測用の入力ボードを作成するにあたり,各種加工機を新たに購入したため.また,当初購入予定であった筋電センサは今年度の研究においては新たにチャンネルを増やす必要がなく,相応しいものを再検討したため.
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次年度使用額の使用計画 |
制御ソフトウェア更新および購入を延期した消耗品の購入に用いる.
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