研究実績の概要 |
本研究では超音波診断におけるメンタルローテーション能力のロボットによる再現を目指している.これにより患者側支援のみならず,医師側支援も可能とし,患者のための支援が結果として医師側の支援につながる,またその逆も起こりうるような創発環境の構築を狙いとしている.このシステム実現にあたり求められるのは(1)様々な体位の検査を可能とする医療支援ロボット,(2)メンタルローテーション能力・生体信号変化に基づいた疲労計測システム,(3)検査者・被検査者双方のための創発的医療支援のための制御システムの3点である. 平成29年度は(3)について実施した. 超音波診断におけるプローブ走査支援を行うために, 検査者とロボットによる協調動作を行う際,ロボットに取り付けられた力覚センサが検出する大きさ・方向に応じて力制御系を構築することでロボットは検査者の意図した方向に駆動することは言うまでもない.しかしながら,この際の力センサ出力を見ても,検査者がどのような意図をもって力を加えたのか,その特徴を読み取ることは難しい.そのため,検査者が思い描く方向に力を入れ,プローブを動かそうとした際に,意図した方向に力センサの値が検出されるような変換行列の構築を行う必要がある.そこでロボットに取り付けた6軸力センサの出力を検査者の意図した方向の力・モーメントに変換する意図推定行列を提案し,実装した. 従来の研究では力センサ出力は絶対座標系において出力されるため検査者とロボットの位置関係を考慮できないのに対して,意図推定することによって検査者座標系による検査者の意図を可視化することに成功し,協調動作時の検査者から見た意図を計測できるようになった.この意図をロボットシステムに組み込むことで,ロボットと検査者の位置関係によらない,検査者に合わせた支援システムの構築が可能となった.
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