研究課題/領域番号 |
15K16343
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤澤 彩乃 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (10624885)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 可塑剤 / 毒性評価 |
研究実績の概要 |
軟質ポリ塩化ビニル製医療機器に使用される可塑剤は生体中に一部が溶出することが知られており、主に欧州において毒性の疑いから代替が進められている。すなわち、汎用されていた Bis-(2-ethylhexyl)-phthalate (DEHP) を Trioctyl trimellitate (TOTM) へ置き換えた製品が開発されてきた。一方、DEHP及びTOTMのいずれを使用した製品においても、透析時の不明熱を初めとした起炎性を疑う現象が報告されており、潜在的な毒性の評価が不十分である可能性がある。本研究では、毒性発現が生体コンディションに依存する可能性を明らかにし、感度良くまた使用実態に即した安全性試験法を提案することを目的とした。 昨年度までに、ヒト新鮮血および健常ラット由来血液を用いた試験において、可塑剤由来の炎症反応機序を解析し、異物貪食反応の関与が最も高いという知見を得た。本年度は、環境負荷をかけることで交感神経優位状態や体温上昇を誘導したラットについても同様に血液を採取し、活性化白血球における炎症反応の増幅を試みたが、健常ラット由来血液を用いた場合と比して炎症反応を増幅することはできなかった。 一方、ヒト新鮮血による試験系についてラウンドロビンテストを行い、試験施設に依存しない半定量的な結果が得られることがわかった。試験施設あるいは試験回ごとの反応性を比較すると、一定した値を得ることが難しく試験精度を確定できなかった。ドナーの遺伝的多様性以外の因子が関与していることが明らかであるため、次年度に継続して生体コンディションとの関連性を検討し、関与の強い炎症系因子に着目して最適な細胞評価系を探索する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
27年度までの課題進捗状況は順調であった。 28年度に本研究以外のエフォートにおける業務が間歇的に発生した関係で、ラットを用いた検討の進捗が遅れていた。 今年度は、処置ラットの血液を用いた検討を行ったが、予期していた炎症反応の増強が見られず、タンパク解析および遺伝子解析に至ることはできなかった。一方で、ヒト新鮮血を用いた試験法の普遍化に成功し、またヒト血液における同様の試験時に採取したサンプルからの遺伝子解析を発展させたことで、試験感度を上昇させうる因子の候補を絞り込むことができたため、次年度においては、ラットを用いた検討を一部削減し、細胞系での検討を並行して行う。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト新鮮血を用いた試験における遺伝子解析結果を利用し、可塑剤の炎症惹起性を高めると考えられる状態のラット血液を得る試みを継続する。着目する因子が活性化している細胞系を探索、あるいは遺伝子導入により作出し、感度の良い細胞評価系を立ち上げる。 同時に、可塑剤の培養液への分散方法について効率化と定量化することを目的として試験間誤差を最小にするよう検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、環境負荷をかけることで交感神経優位状態や体温上昇を誘導したラットについて血液を採取し、活性化白血球における炎症反応の増幅を試みたが、健常ラット由来血液を用いた場合と比して炎症反応を増幅することはできなかった。そのため、予定していた遺伝子解析やタンパク質解析を行うことができなかった。 次年度は、ヒト新鮮血を用いた試験における遺伝子解析結果を利用することで、可塑剤の炎症惹起性を高めると考えられる状態のラット血液を得る試みをより効率的に継続する。着目する因子が活性化している細胞系を探索、あるいは遺伝子導入により作出し、感度の良い細胞評価系を立ち上げる。同時に、可塑剤の培養液への分散方法について効率化と定量化することを目的として試験間誤差を最小にするよう検討を行う予定である。
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