本研究課題では,がん治療などの副作用として生じる放射線皮膚障害における皮膚の線維化やリンパ管機能不全に対するリハビリテーション介入の効果を運動機能,病理組織学,発現分子という点から明らかにすることを目的とした。 上記の目的を達成するために,我々はラット後肢の局所放射線障害モデルを構築し,急性期のリハビリテーション介入として超音波療法を実施した。平成27,28年度は,運動機能ならびに皮膚の病理組織所見,皮膚の線維化を促進するタンパク(Transforming growth factor (TGF)-β)の発現を中心に検討した。その結果,超音波療法を実施することで,放射線障害部位における関節可動域の有意な改善や好中球数の減少など炎症性の組織変性の軽減が明らかになった。しかし,TGF-β-induced proteinの発現量には有意差が認められず,病期による分子発現の変化やその機構をより詳細に調査する必要性が考えられた。 最終年度である平成29年度は,皮膚のリンパ管に与える影響を調査した。局所放射線障害モデルの皮膚に超音波を照射(1週間に5日,1日10分)し,X線照射4週間後に皮膚を採取し,凍結切片を作製後,リンパ管マーカーであるlymphatic vessel endothelial hyaluronan receptor-1(LYVE-1)に対する免疫染色を実施した。その後,LYVE-1陽性細胞面積を測定し,超音波非照射群における面積と比較した。その結果,超音波療法を実施することでより多くのリンパ管が分布する傾向が認められた。 以上の結果を総括すると,急性期の放射線皮膚障害に対して超音波療法が皮膚の炎症や関節可動域の低下を抑制するとともにリンパ管の形成異常を改善することが示唆され,放射線皮膚障害に対する超音波療法の補助的治療法として可能性が示された。
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