前頭-頭頂ネットワークは筋骨格系の状態をモニターし、姿勢モデルを構築・更新することでヒトの身体意識に強く関与していると考えられている。経頭蓋交流刺激(transcranial alternating current stimulation : tACS)にて前頭-頭頂ネットワークの振動性神経活動を人工的に操作することで、身体意識の研究に用いられる腱の振動による運動錯覚の変動から前頭-頭頂ネットワークと身体意識の関係を明らかにすることを目的とし研究を行った。16名の若年成人が参加し3種類のtACS(同期刺激、非同期刺激、シャム刺激)を被験者間でランダムに実施した。前頭-頭頂ネットワークに同期的tACSを行うと、シャム刺激と比べ運動錯覚が有意に増加した。非同期tACSでは運動錯覚は逆に減少する結果となった。実際の感覚である振動感覚はどの条件でも変化しなかった。このことから前頭-頭頂ネットワークへの振動性脳刺激は、感覚自体に作用することなく、運動錯覚を変化させることがわかり、前頭-頭頂ネットワークが身体意識に関与している直接的な因果関係が明らとなった。リハビリテーションにとって重要なヒトの身体意識が人工的に操作できることがわかり臨床応用への基礎的な研究となった。さらに離れた領域間の連絡を変化させる刺激手法を応用し模倣行動を促進させる研究を実施した。45人の若年健常者が参加し、3種類のtACS(同期刺激、非同期刺激、シャム刺激)を被験者間でランダムにミラーニューロンシステムに投与し、模倣に関する反応時間、模倣行動を解析することでどの刺激パターンが模倣能力を改善させるか現在解析中である。この研究は模倣に関する社会性機能を向上させ、麻痺のある患者のリハビリテーションや他者の心の推測が困難である精神疾患患者への治療に発展していくと考えられる。
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