本研究の目的は、呼吸・循環障害を合併した高度肥満患者への包括的リハビリテーションの有効性を確立することである。呼吸・循環障害を合併した肥満患者は、運動耐容能の低下による活動性低下が更に肥満を助長する悪循環に陥り易いため、運動療法による根源的治療およびQOLの向上が期待できる。運動療法を進めていくにあたり、モニターでのリスク管理や負荷強度の調整などへの特別な留意が必要となる。本年度は、高度肥満患者に対する運動療法の種類や運動量により体重減量効果や体組成変化の違いがあるかを研究した。当科入院し包括的肥満リハビリテーションを行った高度肥満症患者17名(男性7名、女性10名)に対し、運動の種類(水中トレッドミルや自転車エルゴメーター)、運動時間や自主歩行量が、体重減量効果や体組成変化(体脂肪量の変化や骨格筋量の変化)に与える影響を調べた。運動療法の種類や自主歩行の歩数による体重減量効果の有意差は認めなかったが、運動量が多いと体重減量効果が高くなる傾向がみられた。高度肥満患者に対する運動療法では、個々の患者さんの病態や合併症に応じ安全に実施できる内容を設定し、運動量や体重変化などの自己記録を習慣づけることが、運動療法アドヒアランスの向上につながる。体重減量効果を高めるには、食事療法と併用して運動量を増やす必要があり、監視下の運動療法に加え、自主訓練メニューの設定や指導を進めていくことが重要と考えられた。
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