研究課題/領域番号 |
15K16351
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中山 敦子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60529147)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腹部大動脈瘤 / 心臓リハビリテーション |
研究実績の概要 |
腹部大動脈瘤(AAA)における内科的管理症例に対して、心臓リハビリテーション(心リハ)施行し、その経過を前向き検討をした。 背景及び目的 腹部大動脈瘤患者は本邦においても増加の一途をたどり、潜在的腹部大動脈瘤の推定患者数は 200万人と言われている(総務庁統計局「国勢調査報告(2012)」)。大動脈瘤は破裂をすれば高率に死に至る疾患で あるが、破裂のメカニズム解明や疫学的研究は未だ十分ではない。大動脈瘤に対する効果的な内科的治療がほと んど確立されていないため、瘤が外科的治療適応となるまで経過観察しているのが現状である。small aneurysmの時点で何らかの治療を行うことで外科的治療を回避できれば、患者負担を軽減し、医療経済的にも有 益であると考える。そのため薬剤による瘤退縮を目指した研究も多数進行しているが、動物実験での成功に留ま りMarfan症候群以外ではヒトへの実用化はほとんど成功していない。そこで、薬剤以外の内科的治療の介入手段 として心リハが挙げられる。 心リハは既に血管内皮機能改善効果、交感神経亢進の低下、骨格筋ミトコンドリア増加、抗炎症効果などを介し て、心疾患患者の社会復帰のニーズに応えながら再入院率の低下や死亡率の低下に貢献していることが証明されている。海外では術前大動脈瘤患者に対して運動療法の安全性がいくつも報告されており、3~5cmの腹部大動脈 瘤に関しては安全に心肺運動負荷試験(CPX)が可能であり1),CPXに基づいた運動処方により対照群に比して 10%の運動対応能の向上が認められたとの報告があり2).術前の機能評価ができる点,術前に運動対応能を改善することにより術後の合併症を軽減させることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腹部大動脈瘤(AAA)における内科的管理症例に対して、心臓リハビリテーション(心リハ)施行し、その経過を前向き検討をした。 心リハと非心リハをランダムに割り付けする予定であったが、患者数が少ないことや心リハ希望患者が心リハを行えないといった倫理的な観点より、心リハ参加の有無は、患者の意思により決定することに変更した。東大病院における全small AAA症例に心リハを紹介したところ、19名が心リハプログラムに参加し、21名が心リハプログラムに参加せず、在宅での運動を指導された。全例で、研究登録時に一般検査、血管外科医師によるエコーでの瘤径測定、一般採血、TGFβ1、IL-6の特殊採血を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、登録開始後半年の一般検査、血管外科医師によるエコーでの瘤径測定、一般採血、TGFβ1、IL-6、テストステロン、エストラジオールなどの特殊採血を行う予定である。テストステロン、エストラジオールなどの採血は性ホルモンによるAAAへの影響を判定もしくは考慮するために追加の方針としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた状況については、東大病院倫理委員会の承認に1年を必要としたため、研究開始が遅く、研究対象者の参加が想定よりも遅れたためである。遅れは今年度で取り戻すことが可能と想定している。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画について:29年度はfollow upの採血40名分をすべて行う予定であり、患者さんの血漿から特殊項目を測定するための検体検査費用として使用する。また得られた結果を統計学的にまとめるために参考資料が必要であること、まとめた研究をAHAなどの学会発表し、論文のために英文校閲、論文掲載料などの費用が必要である。
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