研究実績の概要 |
口唇裂口蓋裂の治療において,新潟大学顎顔面口腔外科では1983年より二段階口蓋形成手術法を開始し,顎発育による分析から,2010年より硬口蓋閉鎖時期を5歳半から4歳へ早期移行した。本研究課題において,2016年度は,硬口蓋閉鎖時期の早期移行が4歳時から6歳時における言語機能獲得に与える影響について,音声言語の聴覚判定による分析から検討した。その結果,硬口蓋閉鎖術を5歳半に施行した群(以下,晩期群)に比較して4歳に施行した群(以下,早期群)は,5歳時の鼻咽腔閉鎖機能で良好例の有意な増加がみられ,言語機能獲得に肯定的な結果が示された。また,2017年度は,2016年度に明らかになった聴覚的な臨床データを裏付けるため,音響機器であるナゾメーターによる分析から再検討した。対象は早期群のうち各時期の資料が整った14例とし,比較対照は晩期群のうち同じく資料が整った17例とした。評価項目は4歳時から6歳時のナゾメーター(Kay Pentax社製NasometerⅡ6450®,Kay Elemetric, Lincoln Park, NJ)によるNasalance score(母音,文章,高圧文および低圧文)の平均値とした。その結果,5歳時の文章および高圧文のNasalance scoreにおいて,早期群と晩期群の硬口蓋閉鎖床撤去時の間に有意差を認め,音声言語の聴覚判定と整合する結果が示された。そこで,2018年度は,顎発育および音声言語の聴覚判定ならびにナゾメーターによる分析を統合し,当科の二段階口蓋形成手術法における硬口蓋閉鎖時期の妥当性についてまとめている。
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