研究課題
これまで、四肢および腰部の慢性疼痛患者における身体認知変容が報告されてきたが、口腔領域の慢性疼痛患者でもそのような身体認知変容が起こりうるかは不明であった。そこで、口腔内の慢性疼痛患者28名(うち男性3名)を対象とし、自身の舌のサイズ認知と疼痛および心理学的アンケートによる評価に関連があるかを調査した。自身の舌のサイズ認知の評価としては、事前に撮影した顔画像の鼻から下を黒く塗りつぶした画像上に、実際の舌の大きさの80%から120%に大きさを加工した舌を提示し、自身の舌より大きいが小さいかを強制2択にて判別解答させた。判別回答の結果から、各個人の主観的な舌のサイズを算出した。その他、疼痛の評価にはVisual analogue scale(VAS)を、心理学的アンケートにはうつのスケールであるBeck depression inventory(BDI)、不安尺度であるState-Trait anxiety inventory(STAI)、破局的思考のスケールであるPain catastrophizing scale(PCS)を用いた。結果、VASとPCSの下位項目である無力感に有意な正の相関を認め(p=0.035)、主観的舌のサイズとPCSの下位項目である拡大視に負の相関を認めた(p=0.025)。口腔領域の慢性疼痛患者では、四肢で報告されてきたような身体認知変容と痛み強度の直接的な関与は認められなかった。しかし、痛みへの破局的思考と主観的な身体(舌)サイズ認知に関連があることが示された。本研究結果は現在投稿準備中である。
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日本基礎理学療法学雑誌
巻: 20 ページ: 2-7