研究課題/領域番号 |
15K16356
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
片岡 英樹 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 研究員 (50749489)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 筋力低下 / 温熱刺激 / リハビリテーション / 大腿骨近位部骨折 |
研究実績の概要 |
今年度は「疾病や外傷を機に入院したDM合併患者に対する温熱刺激を併用した理学療法プログラムの効果を臨床介入研究によって検証すること」を主目的として掲げ研究を進めた.臨床研究の開始に先立ち,今回使用する遠赤外線温熱機器であるフィットアンポ(日本理工医学研究所)による温熱効果を検証した.具体的には,健常成人男性6名(25.3±3.0歳)を対象に,事前に加温したフィットアンポを被験者の大腿部に置き,60分間加温した.そして,デジタル温度計を用いて,大腿部の表面温度を5分ごとに測定した.結果,大腿部の表面温度は開始時32.6±1.0℃から10分後には37.7±0.9℃となり,その後も温熱刺激を終了する60分後まで37.5~38.0℃と安定して加温が可能であった.また,熱傷などの有害事象も認めなかった.そこで,臨床で頻繁に遭遇するDMを合併した大腿骨近位部骨折術後患者を対象に,温熱刺激と通常のリハビリテーション(以下,リハ)の併用効果を検討した.対象者は,受傷前の歩行が可能な者とし,通常のリハ(筋力トレーニング,歩行練習,ADL練習を中心としたプログラム)のみを施行する対照群と,通常のリハに温熱刺激を併用する併用群に無作為に振り分けた.併用群の温熱刺激は術後2週目より開始し,リハの施行前にフィットアンポを両側大腿部に60分間実施した(温熱刺激は週5回,通常のリハは週6回).評価項目は膝関節伸展筋力,timed up and goテスト,5回椅子起立時間,6分間歩行距離とし術後2週目と8週目に評価した.現在までのところ,対照群5名,併用群3名が介入終了しており,健常者を対象とした検討と同様に有害事象は生じていない.介入結果として,全ての評価項目において両群ともに2週目に比べ8週目は有意な改善が得られているが,両群間の有意差はなく,温熱刺激の併用効果は認められていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は「疾病や外傷を機に入院したDM合併患者に対する温熱刺激を併用した理学療法プログラムの効果を臨床介入研究によって検証すること」を基盤に研究計画を進めてきた.現状では,サンプルサイズが少なく,温熱刺激の併用効果は認められていないが,有害事象もなく実施可能であり,研究計画としてはおおむね順調に進展していると考えている.今後は,サンプルサイズを追加し,検討を進めていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果から,本研究で用いる温熱刺激を併用した理学療法プログラムは安全に遂行可能であると考えられた.しかし,サンプルサイズがまだ不十分であるため,次年度はさらにサンプルサイズを増やし,通常のリハに温熱刺激を併用した場合の有効性について,統計学的根拠を明確にする.また,今年度は大腿骨近位部骨折術後患者を対象にしたが,次年度はその他の運動器疾患や外科術後患者なども対象として検討していく予定である.また,研究成果を関連学会にて発表していく予定である.
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