今年度も昨年度に引き続き,「疾病や外傷を機に入院したDM合併患者に対する温熱刺激を併用した理学療法プログラムの効果を臨床介入研究によって検証すること」を主目的として臨床で遭遇するDMを合併した大腿骨近位部骨折術後患者を対象に,温熱刺激と通常のリハビリテーション(以下,リハ)の併用効果について検討を進めていた.しかし,これを進める中でDMを合併した大腿骨近位部骨折患者数が少なく,対象者の確保が困難であった.そのため,DMが大腿骨近位部骨折術後の身体パフォーマンス(timed up and goテスト,5回椅子起立時間,6分間歩行距離)に与える影響について,過去の蓄積データを用いて,DM合併患者(DM群)と非DM合併患者(対照群)を対象に後方視的に比較検討した.その結果,両群間で身体パフォーマンスの改善状況に有意差を認めなかった.そこで,本年度は,DMの合併の有無にかかわらず,大腿骨近位部骨折術後患者を対象に温熱刺激と通常のリハ(筋力トレーニング,歩行練習,ADL練習等)の併用効果を検討することとした.対象は受傷前の歩行が可能な者とし,通常のリハに温熱刺激を併用する併用群と通常のリハのみを施行する対照群に振り分けた.併用群の温熱刺激は術後2週目より開始し,リハの施行前に温熱刺激(フィットアンポ,丸央産業)を両側大腿部に60分間実施した.なお,温熱刺激は週5回,通常のリハは週6回実施した.評価項目は膝関節伸展筋力,身体パフォーマンス(上記と同様),ADL(functional independence measure)とし術後2週目と8週目に評価した.結果,膝関節伸展筋力をはじめ,各身体パフォーマンス,ADLにおいて温熱刺激の併用による有意な改善効果は認められなかった.したがって,今回用いた温熱刺激では通常のリハ介入の効果を促進することは困難であり,温熱刺激のツールや適用方法等,さらなる検討が必要と考えられた.
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