有酸素運動の直接的な影響として、中枢神経に対し神経可塑性を高めることが知られている。本研究課題の目標は、有酸素運動と運動学習課題の併用による運動学習促進効果を解明することにある。本研究成果を応用して、脳卒中や神経疾患患者のリハビリテーションプログラムへの応用が考えられる。 平成29年度の研究目標は、平成28年度に低強度・中強度・高強度の有酸素運動が運動学習の獲得を促進させることが明らかとなったため、その獲得の基盤となるメカニズムを探るために一次運動野の興奮性変化を検討した。 有酸素運動はリカンベント式自転車エルゴメータを用い、運動負荷は低強度を57~64%HRmax、中強度を64~76%HRmax、高強度を76~96%HRmaxでモニターした。学習課題は右示指外転のballistic motor trainingを用いた。右示指先端に加速度センサを取りつけ、示指外転時の加速度の最大値を課題獲得能力の指標とした。この指標を、20分間の各強度の有酸素運動と運動学習課題を組み合わせる条件(低強度条件・中強度条件・高強度条件)と20分間の安静と運動学習課題を組み合わせる条件(安静条件)間で比較し、経頭蓋磁気刺激を用いてballistic motor training前後の運動野の興奮性を検討した。その結果、全ての運動条件において運動直後の興奮性が増強することが観察された。これらの結果から、有酸素運動後の運動学習の獲得には一次運動野が関わることを示された。
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