研究課題/領域番号 |
15K16370
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山口 智史 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (20594956)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脊髄可塑性 / 電気刺激療法 / 経頭蓋直流電気刺激 / 経頭蓋磁気刺激 / 歩行 / 脳卒中 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
平成28年度は、実験1.経頭蓋直流電気刺激(tDCS)と末梢神経からの電気刺激(PES)が中枢神経損傷患者の歩行機能の及ぼす即時効果の検討、および実験2.脊髄可塑性を効果的に誘導する介入手法の検討を目的に研究を遂行した。 実験1では、平成27年度から症例数を増やし回復期脳卒中患者12名を対象として、日を変えて3つの課題(①1mA anodal tDCS+PES、②1mA anodal tDCS+sham PES、③sham tDCS+PES)を、それぞれ20分間適用した。結果、すべての条件で10 m歩行速度に統計学的有意な改善を認めなかった。一方で、歩行時筋電図において、1mA anodal tDCS+PES条件は、他の条件と比較して、有意に歩行時遊脚相(下肢振り出し)で麻痺側の足関節背屈筋の筋活動が増大し、拮抗筋であるヒラメ筋との同時収縮比が改善した。 実験2では、脳活動の興奮性を短時間で高めることが可能なintermittent theta burst stimulation (iTBS)を下肢一次運動野へ適用し、その前後にPESを与えることで、脳活動の興奮性変化のタイミングがPESによる脊髄可塑性に与える影響を検討した。結果、iTBSをPES前に与えることで、PESによって誘導される相反性抑制の増強が増幅され、iTBSをPES後に与えた条件およびsham iTBSをPES前に与えた条件と比較して、その効果が長く持続することを明らかにした。これは、PES刺激前もしくはPES刺激中において、脳活動が高まっていることが脊髄可塑性を効果的に誘導するために重要であることを示唆していると考えられる。 上記の知見は、中枢神経損傷後の歩行機能改善のためのリハビリテーションにおいて、新しい治療手法の開発およびその効果メカニズムを理解する上で、重要な示唆を与えると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)と末梢神経からの電気刺激(PES)の連続介入による歩行機能の及ぼす効果の検討、および脊髄可塑性の効果的に誘導する介入手法について、さらに詳細に検討していく予定である。
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