研究課題/領域番号 |
15K16376
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
矢倉 富子 愛知医科大学, 医学部, 助教 (20722581)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 共感 / 慢性疼痛 / 集団行動療法 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、個々が与える共感が生得的・潜在的な心理・精神機能によって慢性疼痛の回復に及ぼす影響を検討した。まず、共同研究者の指導の下、ギプス固定後慢性疼痛モデルの作成を行った。ギプス固定後慢性疼痛モデルの疼痛レベルを行動学的に評価したところ、ラットを1匹ずつ別々に飼育した場合と、複数で飼育した場合に、疼痛行動にばらつきが見られることが分かった。続いて、定量的な評価を行うため、ラット自由行動下における扁桃体でのドパミン量をMicrodialysisを用いて測定した。その結果、ギプス固定後慢性疼痛モデルではコントロール群に比べ、ドパミンの放出量が1.5倍に増加した。次に、ギプス固定後慢性疼痛モデルの疼痛メカニズムの評価のために、ギプス除去後15週でラットを屠殺し、脊髄におけるグリア細胞の活性化を電子顕微鏡にて観察した。ギプス固定後慢性疼痛モデルでは、コントロール群に比べてグリア細胞数の増加が認められた。共感における行動評価を行うため、Marble-burying behavior test、Place preference testおよび高性能 ビデオ行動解析・振舞自動認識システム(TOP SCAN プライムテック社)を用いた十字迷路test、オープンフィールドtestの評価をコントロール群を用いて行った。今回の結果かを足がかりにさらに解析を進めることで共感が引き起こす神経回路網の形成メカニズムを明らかに出来ると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ギプス固定後慢性疼痛モデルを安定して作成するには、熟達した技術が必要であり、3ヶ月を要した。また、疼痛レベルを行動学的に評価するためには、ラットの取り扱いに一定の経験が必要であった。共感の行動評価を行うため、Marble-burying behavior test、Place preference testおよび高性能 ビデオ行動解析・振舞自動認識システム(TOP SCAN プライムテック社)を用いた十字迷路test、オープンフィールドtestを用いてコントロール群の評価を行った。このシステムの導入のため、約6ヶ月を要した。しかしながら、平成27年度は研究を行う基盤の整備がしっかり行えたと考えており、平成28年度は、共感が痛みの情動システムに及ぼす機序についての基礎的根拠を付与することが出来ると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、集団における共感がもたらす回復への解析を進めるため、以下の点に重点を置き研究を推進していく。①集団における共感がもたらす生得的・潜在的な心理・精神機能が回復に及ぼす影響を検証:A群(ギプス固定後慢性疼痛モデル)、B群(ギプス固定後慢性疼痛モデルおよびコントロール群)、C群(コントロール群)の3群を用いて集団における共感がもたらす生得的・潜在的な心理・精神機能が回復に及ぼす影響を検証する。この場合の情動は複雑でありその中でも他者の不幸が自分にも不快に感じられることも、他者の幸福が自己の快になることも「共感」だと考えられる。そこで、A群、B群、C群を入れたゲージをそれぞれ用意し、2週間の飼育を行う。3群間の行動の影響を動物行動学的に検証する。②情動を支える神経回路網形成の慢性的多次元解析(共感性に関与する神経回路・細胞・分子を同定):セロトニンレベルの指標となる血中濃度・脳内濃度を計測し、形態学的に評価するために免疫染色法を行う。そして、ミクログリア,アストロサイト,c-fosの活性化の移行を解析することにより、共感性に関与する神経回路網について免疫組織化学的・分子生物学的な検証を行う。③ストレスが回復に及ぼす影響の検証(ストレスホルモンの測定):ストレス経験はストレスホルモンであるコルチコステロンが増加し、ストレスの記憶に対する効果はコルチコステロンを介したものである。そこで、血中コルチコステロンをはかりストレスが回復に及ぼす影響を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27度は、263円の翌年度繰越額を計上した。その理由として効率的な利用による残高が生じた為と考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の計画として、集団における共感がもたらす回復への解析を進めることに重点を置き,申請時の計画に沿って研究を推進していく予定である。
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