「痛み」は感覚であり、不快な情動体験を伴うことで警告信号の役割を果たす。「痛み」は他者と共感することにより軽減もしくは増悪するため、共感は「痛み」に強く影響を及ぼすことが予想される。本研究は、共感がもたらす痛み回復の神経基盤の解明に取り組み、集団認知行動療法の有効性に基礎的根拠の付与することを目的とした。ラットの個々が与える共感が生得的・潜在的な心理・精神機能によって及ぼす影響を検討するため、まずラットの視覚認識能力について鏡を用いた検討を行った。具体的内容:①Marble-burying behavior test : 鏡に囲まれたケージ下のラットにおいて、優位にガラス玉を覆い隠さないことがみられた。これにより強迫性障害の不安様行動は、鏡によって不安を増強させる「負の共感」が働いたことにより、優位に増強した。②Place preference test : 鏡があるケージとControlケージのどちらを好むかをPlace preference Box下にて検討したところ、優位に鏡があるケージを避ける行動が見られた。③Microdialysis : 鏡に囲まれたゲージ下においてラットを自由行動下における扁桃体でのドパミン量を測定した。Control群に比べ、ドパミンの放出量が1.5倍に増加した。④嗜好性ボックステスト:鏡、動画、静止画を嗜好性ボックスに入れ、検証した。その結果、ラットの視覚能力が優れていることを示した。今回の結果からラットの視覚能力を検証できたことにより、ラットの共感がもたらす痛み回復の神経基盤の解明に有用であることが分かった。
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