研究課題/領域番号 |
15K16379
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
丸本 浩平 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (80594738)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 認知機能障害 / 有酸素運動 / ワーキングメモリ / 非運動症状 |
研究実績の概要 |
(研究の目的)パーキンソン病(以下PD)では進行すると認知症を合併するといわれ、認知機能低下を抑止することはPDの長期治療を考える上で重要である。PD患者の認知機能に対する有酸素運動の効果を調べる。 (研究実施計画)明らかな認知症のないPD患者でH&Y 重症度ステージ2~4、不整脈がなく、抗不整脈薬治療を行われていない患者を対象とした。入院にて従来のリハビリテーション(理学療法、作業療法、言語療法)に加え1) 有酸素運動を1日50分で週2日追加した群 (有酸素運動群)、2) 院内快適歩行による自主訓練追加群(快適歩行群)の2群で比較検討した。 それぞれ8週間のリハビリテーション介入を行い、その効果の評価として入院時と退院時に自転車エルゴメーターを用い運動耐久性の指標となる最高酸素摂取量、AT (anaerobic threshold) 時の心拍数を測定した。さらに介入効果の評価として栄養状態、代謝機能の変化を一般血液検査、筋肉量・体脂肪量の変化を体成分分析装置 (InBody S20)、呼吸機能をスパイログラム、運動指標 (PD全般の評価:UPDRS、姿勢:スパイナルマウス) 、神経心理学検査にて注意・作動記憶、遂行機能、言語、記憶、視空間機能、非運動症状アンケートにて睡眠状態、日中の眠気、疲労、疼痛、うつ、やる気、QOLを評価した。介入中に抗PD薬、睡眠薬、鎮痛薬、抗うつ薬、抗不安薬などの変更、新たな使用はしないこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況としてはパーキンソン病(以下PD)の認知機能への効果に関して有酸素運動の種類による差の検討には至っていないものの、有酸素運動が一部の認知機能を改善させる可能性で示されつつある。途中結果としては有酸素運動群14例と快適歩行群12例を検討したところ、最高酸素摂取量、Memory Updating-3span (ワーキングメモリの指標)において有酸素運動群で良くなる傾向を示した。有酸素運動を含む運動療法はPDの運動機能の改善のみでなく認知機能を改善させる可能性がある。画像解析の研究に関しては長期効果の解析を中心に行うことに変更したために、これから実施していく予定である。全体としての研究実施状況としてはほぼ予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は前年度までの結果をまとめ学会発表、論文報告していく予定である。さらに、効果の詳細の検討のために脳画像検査(頭部MRI)で脳皮質の体積変化(VBM解析)、脳白質の線維結合の変化(拡散テンソル解析)を調べていく予定である。 また直接的な認知機能へのアプローチである認知リハビリテーションとの比較を行うために、1) 通常のリハビリテーション(理学療法、作業療法、言語療法)のみ、2) 通常のリハビリテーションに有酸素運動を追加する群、3) 通常のリハビリテーションに認知トレーニングを追加する群の3群でパーキンソン病患者の運動症状、非運動症状に対するそれぞれの効果の比較検討を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
画像解析の開始が平成28年4月以降から開始となるため、予定より使用額が少なくなった。神経心理検査、アンケート評価に関して院内の臨床心理士による評価が可能となったために人件費が予定より減った。
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次年度使用額の使用計画 |
画像解析ソフトや、認知リハビリテーションに必要なソフトなどを購入して、さらに研究の内容を充実したものに仕上げていく予定である。
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