人工膝関節全置換術(以下、TKA)術後患者における、足趾握力と術後予後との関係を明調査した。対象は変形性膝関節症患者でTKAを実施した70名(男性15名、女性55名、平均年齢74.5±7.5歳)であった。カルテより身長、体重、BMI、を収集した。測定項目は足趾握力(TGS)、安静時痛および運動時痛(Visual Analog Scale)、10m歩行速度、Timed Up and Go test(TUG)とした。またWOMAC painおよびstiffnessについてアンケートした。測定項目はそれぞれ術前と術後(退院時、術後3-4週目)に測定を行った。術前のTGSについては体重で除して正規化した体重比の値(TGS/wt)を算出した。WOMAC以外の測定項目については(術前値-術後値)/術前値の算出によって変化率を算出した。WOMACについては術前後での変化量を算出した。各測定項目の術前値と術後値について対応のあるt検定を用いて比較した。またTGS/wtと各測定項目の変化率または変化量の関係についてピアソンの相関係数を算出した。有意水準は5%とした。 結果は10m歩行、TUGについては術後有意な遅延が見られ、運動時痛とWOMACのpainおよびstiffnessは有意な改善が見られた。 本研究結果からは術前の足趾握力とTKA術後患者の身体機能との関連は見られなかった。今回は術後3-4週間後に術後データを測定したため、対象者の状態には足趾握力よりも手術による影響が大きく関与しているものと思われた。 今回の研究内容についてメルボルン大学、キール大学の研究者とディスカッションし、足部形態や機能を包括的に捉えて評価する方が望ましいということや、横断的研究によって足部と膝関節の動態の関連を明らかにしてはどうかとの助言を得た。今後それらの意見を参考として研究を進めていく予定である。
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