研究課題/領域番号 |
15K16382
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
岡部 直彦 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30614276)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 脳梗塞 / 運動野再構成 / 皮質脊髄路 |
研究実績の概要 |
本研究では脳梗塞後のリハビリテーションによる運動野再構成がどのようなメカニズムにおいて起こるのかを、解剖および分子の両面で明らかにすることを目的として実験、解析を行っている。これまでの研究により脳梗塞後のリハビリテーションは皮質脊髄路の軸索側枝を尾側頸髄で特異的に増加させることを明らかにした。尾側頸髄はリハビリテーションにより動かされる前肢の筋肉を支配する脊髄領域である。また、リハビリテーションは灰白質中の軸索側枝のみならず、背索中の脊髄線維の数も増加することが分かった。そこで、次の実験では逆行性トレーサーであるレトロビーズ(赤・緑)を吻側頸髄および尾側頸髄に注入することにより脊髄に投射する神経細胞数が脳でどのように変化するかを調べた。その結果、運動野の再構成がみられた梗塞側のRFAでは尾側頸髄に投射する神経細胞数が有意に増加しており、さらに吻側頸髄と尾側頸髄の両方に投射する細胞数も有意に増加することが分かった。これは吻側頸髄を支配していた神経細胞が軸索を吻側頸髄まで伸展し、新たな神経回路を形成していることを示唆していると考えられた。また、追加の行動実験により、運動野再構成のあったRFAをリハビリテーションによる機能回復後に破壊すると機能障害が再現されること、そして最初の梗塞でCFAおよびRFAの両方を破壊するとリハビリテーションによる回復効果がほとんどみられなくなることを示した。これは、運動野再構成のあったRFAが機能回復に重要な役割を果たしていることを示している。 これらの結果により示されたような神経支配の変化は今まで報告されておらず、リハビリテーションのメカニズムの解明のための重要な知見となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では1年目である今年度にリハビリテーションによる運動野再構成の解剖学的なメカニズムを解明することを目的とした。今年度の実験結果はこの目的を大方達成するものであると考えられ、研究の進歩状況はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の実験としては2つの実験を並行して進めていく計画である。一つはリハビリテーションによりおこる神経回路変化をさらに詳細に調べることである。運動野からは皮質脊髄路の他に基底核、視床、赤核そして延髄網様体といった領域への神経投射が存在する。これらの領域は運動の実行や学習に重要な機能をもつため、リハビリテーションによりこれらの領域への投射に変化が生じるかどうかを調べることはリハビリテーションによる機能回復のメカニズムを解明するために非常に重要なことであると考えられる。そこで一つめの実験としては脳梗塞後のリハビリテーションが脳の他の領域への神経投射をどのように変化させるかを調べる。二つめは神経回路変化の分子メカニズムについて調べる。これまでの実験結果では、軸索の変化はリハビリテーションによるトレーニングに関与する脊髄領域に特異的に起こっている。このことは、これらの変化を引き起こすメカニズムとして脊髄の特定領域で局所的に働く分子が存在することを示唆している。この分子を特定することが二つめの実験であり、ELISAやqPCRを用いての実験を計画中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の使用予定額は概ね使用済みであるが、分子生物的な実験に至らなかったため使用した金額が若干少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、分子生物的な実験を行うため、実験動物や試薬の購入に使用する。
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