肺炎は要介護高齢者に最も多い死亡原因である。誤嚥性肺炎は誤嚥物を喀出できれば発症リスクを軽減できる。そのため、速い呼気流速を産出できる能力を低下させないための戦略が必要である。そこで、速い呼気流速を産出するために重要な腹部筋群に関して研究を行った。 平成27年度は、腹部筋群の中でも内腹斜筋の筋厚が厚い高齢者ほど速い呼気を産出する能力は高いという関係性を示した。平成28年度は、高齢者を対象に、再度、データ取りを行い、内腹斜筋単独の筋厚よりも、内腹斜筋と外腹斜筋を組み合わせた筋厚のほうが最大呼気流速との関係性は強いということを示した。つまり、速い呼気の産出能力を高めるためには、内腹斜筋だけではなく、外腹斜筋も併せて、トレーニングする必要があると考えられる。平成29年度は、速い呼気の産出能力を高めるための腹部筋トレーニングの種目を考えるため、内腹斜筋と外腹斜筋の筋活動を導出し、最大呼気位を保持した際の内腹斜筋の筋活動が大きい、あるいは、サイドブリッジを保持した際の外腹斜筋の筋活動が小さい高齢者ほど、最大呼気流速が速いという関係性を示した。これは、内腹斜筋の筋活動で努力的に深い呼気を行うことのできる高齢者、あるいは、外腹斜筋の筋力が強いことで体を支える際の筋活動は少ない高齢者ほど、速い呼気の産出能力が高いということを意味している。この結果から、努力的な深い呼気で内腹斜筋の筋活動を高めることや、姿勢保持で外腹斜筋の筋力を強くすることは、速い呼気の産出能力を高める可能性があると考えられる。また、平成30年度は、活動的な生活に関連するとされている高齢者の筋肉量を計測し、腹部筋群の単独の筋厚との関係を検討した。その結果、筋肉量は外腹斜筋の筋厚と関係性が強いことを示した。つまり、腹部を意識したトレーニングに加え、日常生活での活動性を維持していくことの重要性を示したと考える。
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