本研究では,微弱な末梢神経連発刺激を用いて,大脳皮質の抑制系の生理学的機序を探索し,評価法を確立することを目的とした.最終年度では,主に半球間抑制に対する評価手法の確立,さらにはその評価方法を用いたリハビリテーションアプローチの検討を行った. 半球間抑制の評価には両手の電気刺激を用い,片側刺激の直前に反対側刺激を先行させることにより,一次体性感覚野のMEG応答に及ぼす影響を検討した.結果,単発刺激に比べ,反対側へ先行刺激(C-T間隔:33ms,50ms)を与えた場合,右一次体性感覚野の応答が有意に減弱し,末梢神経連発刺激により,一次体性感覚野での半球間抑制が評価できる可能性が示された. さらに,運動付加が半球間抑制に与える影響を検討した.一側の等尺性運動を遂行した条件では,遂行しない条件に比べて,顕著な半球間抑制が生じない結果となった.この結果は,運動介入を行うことにより,体性感覚野の半球間抑制を調整できる可能性を示唆しており,リハビリテーションアプローチの考案において重要な知見であると思われる. 研究内容は,国内学会(日本臨床神経生理学会,日本生体磁気学会)で発表するとともに,その成果の一部は著書「再生医療とリハビリテーション」,国内外論文に掲載した.
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